
本記事は、全国保険医団体連合会が刊行する「月刊保団連」(2025年11月号)に掲載されています。
【月刊保団連】月刊保団連2025年11月号 - 全国保険医団体連合会
Q.女性スタッフが疲れた顔しているので原因を聞くと、夫の出勤時間が早くなり、朝食の準備のために早く起きるので寝不足気味ということでした。夫婦共働きの中、妻が朝食を作ることが当たり前だと思っている男性の感覚はおかしいと思います。この場合、当院にとっても損害なわけですから「朝食の準備くらい自分でやれ」と言ってやりたいところです。
A. ごもっともです。しかし、長い間かけて築かれた夫婦の役割分担ですから第三者が意見することは困難です。「家事は女性の役割だというのはおかしい」と当人から夫に言ってもらうのが一番だと思います。中高年男性ほど、性別役割分担意識が強い傾向があります。
Q.そういえば私も家事はあまりしません。夕食の準備はほとんど妻にさせています。
A.先生のように先進的な考え方を持っていてもそうですから、日本における性別役割分担意識はひどいものです。2025年「ジェンダーギャップ指数」全ランキングで日本は世界148カ国中118位です。中国、韓国より下位でした。
Q. 医療機関は働く女性が多いこともあり、女性が能力を発揮するためにも何とかしたいですね。
A.男性の私も無意識のうちにこうした意識に侵されています。先日入院した時、私の担当看護師が男性だったので少しがっかりしました。ちなみに労働法を専門とする大学教員から一番転職の多い職業は「男性看護師」だと聞いたことがあります。おそらく男性看護師は世間の性別役割分担意識の下、つらい経験をしていると思います。
Q.日本において、ジェンダーギャップ、性別役割分担意識をなくすのは大変ですね。
A.かつてインスタントラーメンの広告で「私作る人、僕食べる人」というCMがテレビで流された国なので大変です。マスコミ業界も長らく男性中心社会で、ジェンダーへの意識が古いままです。一方、近年の新卒男性労働者は80%が育児休業を取ると答えています。若い人に期待したいです。そして、男性正社員の労働時間の思い切った短縮が決定的に重要だと考えます。また日本は通勤時間も長いです。首都圏では、通勤時間が片道1時間半以上んど珍しくありません。これでは男性が家事に割く時間などありません。内閣府が行った調査では、1日の家事に割く時間が女性263分に対し、男性37分という結果でした。
Q. 男性正社員の長時間労働のしわ寄せが、女性の数が多い職場に来てしまいます。
A.毎年11月は「過労死等防止啓発月間」です。過労死の原因は長時間労働です。女性の能力発揮のためにも、男性の労働時間短縮に向けて経営者も労働者も向き合う必要があります。また、性別役割分担意識に対し批判的な弁護士の多い弁護士会では、懇親会に女性コンパニオンを呼ばなくなったところもあります。私が理事を務めている労働保険事務組合の懇親会にはコンパニオンに来てもらっていますが、見直しを考える必要があるかもしれません。
