本記事は、全国保険医団体連合会が刊行する「月刊保団連」(2025年7月号)に掲載されています。

【月刊保団連】月刊保団連2024年7月号 - 全国保険医団体連合会

解雇裁判はお金と労力と時間の無駄

Q.国会で年金が議論されています。自民党、公明党、立件民主党で話し合いされて合意されたとニュースで見ましたが、マクロ経済スライドがよく分かりません。

A. マクロ経済スライドとは、2004年の年金制度改正で導入され、賃金や物価の改定率を調整して、緩やかに年金の給付水準を調整する仕組みです。

毎年行う年金額の改定時に、指標となる物価の上昇より年金額の引き上げを低く抑え、実質削減します。

Q.よく分かりません……。

A.簡単に言えば、物価・賃金が上がってもそれ以上に給付額を上げない仕組みです。具体的には、賃金や物価による改定率から、「スライド調整率」を差し引くことによって、年金の給付水準を調整します。「スライド調整率」は、公的年金被保険者の変動と平均余命の伸びに基づいて設定します。

特に、会社員時代の給与水準に応じて給付額が定まる報酬比例部分が定額の厚生年金加入者や、報酬比例部分の上乗せがない国民年金加入者(自営業やパート労働者など)ほど、マクロ経済スライドによる年金削減の打撃は大きくなります。あまりにも複雑で一般の理解は進んでいません。

この難しさが年金についてのについての国民的議論が広がらない原因の1つだと思います。

Q. 安心できる年金制度に向けて何かいい方法はないのですか。

A.マクロ経済スライドという制度はなかなかのくせ者です。年金の上昇を抑え、次の見直し時は下がった年金を基準にスライド率を決めるため、長期的にはびっくりするほど下がってしまいます。早めにマクロ経済スライドをやめ、年金支給額を上げることが重要だと思います。

年金給付には年間50兆円ほど使われていますが、現在、厚生年金の積立金は約5年分の290兆円、国民年金では約3.8年分の14兆円も積立金があります。これをもっと活用すべきと考えます。

Q.パート従業員からも社会保険料を徴収しようとしていますね。

A.確かに社会保険料の負担は中小事業者にとって大変です。しかし、厚生年金保険料は高収入者ほど有利になっています。厚生年金保険料は標準報酬月額に応じて支払っています。標準報酬月額には上限があり、月額65万円で頭打ちです。先生の所ところは医療法人ですから厚生年金加入しており、先生の保険料は事業主分も含め、月額11万8950円です。しかし、年収30億円と言われるソフトバンクの孫正義さんも同じ額しか払っていません。

Q. 私と孫さんが同じ支払額なんですか?

A.そうです。孫さんが報酬額×18.3%の保険料を支払えば億単位になります。これは極端な例ですが、せめて高所得者の保険料の上限額を健康保険と同水準に引き上げ、給付については収入の高すぎる人は一定程度しか将来の年金給付に反映しないようにすべきです。専門家の話ではこのようにしている国もあるそうです。

ともかく日本は、消費税を上げ法人税を下げましたから大企業の内部保留が600兆円にも膨らんでしまいました。

この一部を使うだけでも日本は充実した年金制度が構築できます。

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