本記事は、全国保険医団体連合会が刊行する「月刊保団連」(2025年10月号)に掲載されています。

【月刊保団連】月刊保団連2025年10月号 - 全国保険医団体連合会

Q.女性スタッフが「セクハラで心身ともに限界となり継続勤務ができない。退職する」と言ってきました。男性職員のセクハラが理由なので「離職票の退職理由は会社都合にしてくれ」と言ってきました。こういう場合どう対応したらいいでしょうか。

A. セクハラの加害者と言われているスタッフは、セクハラしたことを認めているのですか。

Q.本人の了解を得てセクハラをしたという男性職員に確認しましたが、全く認めていません。第一、被害者もどんなセクハラだったのか具体的には言いません。ただ「セクハラがあった。もう耐えられないから退職する」と言っています。

A.している側にセクハラの意識がないとしても、現代ではセクハラになることがたくさんあります。つい最近も警察署長が懇親会の場で寮に入る女性署員たちに対して、「寮では食事が出て自炊をしないので料理ができない。花嫁修業で苦労する」とか「出生率が下がる」などと発言したことがセクハラとなり署長は辞職しました。さらに、電通では過労自死した女性職員に「女子力がない」と言ったなど、大手企業の社員でもその発言がセクハラになるとは気づいていませんでした。

Q. 退職理由の「会社都合」と「自己都合」ではどう違うのですか。

A.会社を自己都合で退職した場合、雇用保険(基本手当)の受給手続日から原則として7日経過した日の翌日から1カ月間雇用保険(基本手当)を受給できない期間があり、これを「給付制限」といいます。会社都合の場合、7日間の待期期間だけで基本手当が受給できます。

Q.事実が確認できない中では、離職票に会社都合とは書けないと考えています。

A.そういう考えであれば、離職票は自己都合として当人にはハローワークに行って事情を説明すれば「特定理由離職者」と認めてくれることもあると伝えてあげればいいと思います。

Q. 「特定理由離職者」とは何ですか。

A.特定理由離職者とは、雇い止めや健康上の理由などの正当な理由により離職した人々を指し、通常の自己都合退職よりも有利な条件で失業保険を受け取ることができます。ハローワークが、「特定理由離職者」だと判断すれば「会社都合」で離職した場合と同じように扱われます。

Q.ハローワークが判断する上で、雇用主に問い合わせることはありますか。

A.あります。ハローワークとしても判断する以上責任があるからです。

Q.会社都合とすると何か問題はありますか。

A.会社都合とすると雇用保険関係の助成金が受給できなくなることがあります。

Q.事実がはっきりしないので「会社都合」とした場合、ハローワークの調査はありますか。

A.その場合はありません。しかし、めったにないことですが、民事的な損害賠償請求をしてくる可能性はゼロではありません。

 事実に即した対応が重要です。事実が分からなければ離職票の離職理由のところに「労働者の判断によるもの」という欄があります。そこの「就業規則が著しく害される言動」にチェックをしておくとよいと思います。今後のトラブルを回避するためにも「退職合意書」を交わしておくとよいでしょう。「退職合意書」が必要な方は、社会保険労務士法人 曽我事務所のホームページからダウンロードしてください。

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