

※本記事は、千葉県最大の建設専門紙【日刊建設タイムズ紙】にコラム「社労士 曽我 浩の目(128回目・2025.9月)」として掲載されています。
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労務費の価格転嫁で従業員に明るい笑顔 政府も後押し
賃金未払いで労働基準監督署の調査がありました。下請け単価が低いので残業代までとても支払うことができないと社長が訴えました。しかし労働基準監督官は「それでは残業代を支払わなくても仕方がありませんね。」とは絶対に言いません。残業代を支払うよう是正勧告が出て、また来いというわけです。労働基準監督官は「そんなに下請け単価が低いというなら公正取引委員会に言ってあげます。」と、ここまでは言ってくれます。しかしその先はわかりません。政府も「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を作成しています。一部の中小企業では原価計算を適正にし、価格転嫁を実現できたところもあります。しかし建設業の元請けや運送業の荷主等に対しては力関係が歴然としているため、労務費の価格転嫁はほんの一部にとどまっています。政府の指針では、企業のトップが担当者任せにせず自ら取り組むよう要請しています。企業も下請け事業者などに向けて「パートナーシップ構築宣言」をしなければなりません。しかも親企業側から呼びかけて1年に1・2回は価格交渉に応じよ、となっています。親企業が政府の方針通りにパートナーシップ構築を宣言し実行させるには業界全体での取り組みが必要です。
●業界として取り組み、必要に応じて国会議員などの協力も得る必要あり
業界の新年会などでは多くの国会議員が来ます。業界の実情を訴え国会で大いに議論をしてもらいたいものです。大企業の支払能力は十分にあり。信じられないことですが大企業の内部留保が600兆円もあります。そのほとんどは中小企業が中褪せて稼いだものです。
●2025年9月 価格交渉促進月間
経済産業大臣が実施する【価格交渉促進月間】の概要によると、物価上昇に負けない大幅な賃上げを成し遂げていくため、原資の確保が不可欠であり、米国関税措置の影響が不透明だとしても価格転嫁、取引適正化の取り組みを継続していく必要があるとされています。現状では、受注企業がコスト上昇額のうち価格転嫁できた額の割合は5割程度となっています。大企業は価格転嫁交渉に積極的に応じる義務があります。さらに、パートナーシップ構築宣言への参加が推進され、取組状況が芳しくない発注企業トップに対しては、事業所管轄大臣名での指導・助言、注意喚起が実施されます。
9月は衛生週間準備月間 今年のスローガン「ワーク・ライフ・バランスに意識を向けて ストレスチェックで健康職場」
業務災害に係る精神疾患による過労死事案の労災認定件数は令和6年度には1,055 件と過去最多。精神疾患は企業の安全配慮義務とともに、労働者の自己保健義務も必要です。パワハラでうつ病になったという大手建設業の労働者が相談に来ました。睡眠時間を聞くと、朝6時に寝て昼12時に起きるというわけです。そのうえ夜はスマホをいじっている。これでは誰でも精神を病んでしまいます。生活を整えることが大切です。
精神科医でベストセラー作家の樺沢紫苑先生も、「薬より睡眠・運動・朝散歩」が重要だと述べています。
令和7年10月1日~ 育児・介護休業法改正 柔軟な働き方を実現するための措置等
男女とも仕事と育児・介護を両立できるように、育児期の柔軟な働き方を実現するための 措置の拡充や介護離職防止のための雇用環境整備、個別周知・意向確認の義務化などの改正があります。
事業主は、3歳から小学校就学前の子を養育する労働者に関して、以下5つの選択して講ずべき措置の中 から、2つ以上の措置を選択して講ずる必要があります。 労働者は、事業主が講じた措置の中から1つを選択して利用することができます。 なお、事業主が講ずる措置を選択する際、過半数組合等からの意見聴取の機会を設ける必要があります。
① 始業時刻等の変更:( 一日の所定労働時間を変更しない場合)フレックスタイム制 ・始業または終業の時刻を繰り上げまたは繰り下げるなど時差出勤の制度
② テレワーク等:一日の所定労働時間を変更せず、月に10日以上利用できるもの
③ 保育施設の設置運営等: 保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与をするもの(ベビーシッターの手配および費用負担など)
④ 養育両立支援休暇の付与:一日の所定労働時間を変更せず年に10日以上取得できるもの
⑤ 短時間勤務制度:一日の所定労働時間を原則6時間とする措置を含むもの
3歳未満の子を養育する労働者に対して、子が3歳の誕生日の1ヶ月前までの1年間に、事業主は柔軟な働き方を実現するための措置として上記で選択した制度(対象措置)に関する事項(周知事項、個別周知・意向確認の方法)の周知と制度利用の意向の確認を、 個別に行わなければなりません。 ※利用を控えさせるような個別周知と意向確認は認められません。

≪参照≫厚生労働省
令和7年10月1日~ 育児・介護休業法改正 仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮
事業主は、労働者が本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出た時と、労働者の子が3歳になるまでの適切な 時期に、子や各家庭の事情に応じた仕事と育児の両立に関する以下の事項について、労働者の意向を個別に 聴取しなければなりません。また、事業主は、聴取した労働者の仕事と育児の両立に関する意向について、自社の状況に応じて配慮しなければなりません。

≪参照≫厚生労働省
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