
本記事は、全国保険医団体連合会が刊行する「月刊保団連」(2026年7月号)に掲載されています。
【月刊保団連】月刊保団連2026年7月号 - 全国保険医団体連合会
Q.シフト制で働いているパート職員の有給休暇中の賃金についてお聞きしたいです。当院での所定労働時間は5時間と7時間で区切っています。所定労働時間が7時間の日に取得すると7時間分の賃金を支払うことになりますか。
A. その通りです。有給休暇中の賃金は、労働基準法で①平均賃金、②もしくは所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金、③健康保険の標準報酬日額に相当する賃金を基に、その日の所定労働時間数で除した金額を当該時間に応じて支払うこととなります。実際には、③で実施しているところはほとんどありません。多くは②の「通常の賃金」で計算しています。
Q.そうすると、所定労働時間が7時間の日に有給休暇を取得すると7時間分の賃金を受け取れ、5時間の日は5時間分しか支給されませんから、所定労働時間が多い日に有給休暇を取得する人が集中してしまいます。こういったことを避けるために過去3ヶ月間の平均賃金を支払うのはいかがですか。例えば、所定労働時間が5時間の時も7時間の時も6時間と決めるのはどうでしょうか。
A.法律は、雇用主に有利な時も不利な時もあります。就業規則にあらかじめ定めておけばそれでいいという人もいますが、これは明らかに「通常の賃金」を支払うことになりませんから違法です。ただし、所定労働時間が5時間の時に6時間分支払うのは違法ではありません。就業規則を変更して平均賃金で支払う方法もかなり不利になる人もいますが、社会通念上も問題ないと判断されます。
Q.所定労働時間が変わるので賃金計算が煩雑です。
A.それなら労働時間が5時間であっても7時間であっても7時間分の賃金を支払うのも選択肢の1つです。
Q.それはおかしくないですか。働いている日より休んだ日の収入が多くなるなんて!
A.いいえ、それは考え方次第です。欧州や南米では、有給休暇中の賃金を20%から30%ほど引き上げる企業もあります。
Q.一体、なぜそんなことをするのでしょうか?
A.背景には、①休暇は消費活動、②旅行・家族時間にかかるお金を補助(バカンス手当)、③有給取得促進を目指すという考えがあります。特に欧州や南米では、「よい仕事のためにバカンスは必須」「休暇を取得させるにはお金も必要」との認識が広くあります。長年にわたる粘り強い労働運動の成果でもあります。しかも、こうした国には有給休暇の取得率という考えがありません。100%が当たり前だからです。よくフランス人は1年は2種類の期間しかないといいます。「1つは『バカンス』、もう1つは『バカンスを待っている期間』」。
Q.私は、勤務医の頃に有給休暇など取ったことがありませんでした。有給休暇5日間取得が義務化されてからは、実際には取得していないのに雇用主の病院側で取得したことにしていました。
A.まったくひどい話です。日本では「医師聖職」論が根強くあります。以前、オランダの病院・介護施設を訪問した際、医師に有給休暇はどのくらい取得しているか聞いたところ「2カ月」と回答しました。この話をある保険医協会の会員で、スウェーデンで数年働いた経験がある歯科医師の先生にしたところ、大きくうなずいてくれました。
