
本記事は、全国保険医団体連合会が刊行する「月刊保団連」(2026年5月号)に掲載されています。
【月刊保団連】月刊保団連2026年5月号 - 全国保険医団体連合会
Q.能力不足のスタッフを解雇したいと思っています。注意点はありますか。
A. そんな理由では解雇などとてもできません。能力がないとはどういうことですか。
Q.例えば、患者からの質問を他の職員に確認する際、名前、患者ID、生年月日などを確認しないために、患者に繰り返し尋ねる状況が生じています。また、会計の際に患者に診察券や領収証を渡し忘れたり、電話対応においても、相手の名前や要件を十分に把握していないため内容を伝達できないなどですす。
A.これまでに注意は書面で行いましたか。
Q.「勤務等改善指導書」(通称:イエローカード。社会保険労務士法人 曽我事務所のホームページから書式がダウンロード可能)を渡して話し合いました。口頭では何回も忠告しましたが、書面では1回です。
A.書面で返信をもらうようにしていますか。
Q.本人には、書面での返事を提出するようには伝えていません。
A.本人の改善提案を書面でもらうようにしてください。また、指導記録はありますか。
Q.こんなケースは初めてなのでそんなことしていません。
A.先生の院所では就業規則に、業務改善に努める義務について記載していますか?
Q.どういうことですか。
A.就業規則で能力不足の職員に対し、指示および懲戒するにしても、根拠となるものが必要です。例えば、就業規則で職員に対し「担当業務を正確かつ適切に遂行しなければならない」「指導を受けた場合、速やかに改善しなければならない」「問題点について指導を受けた場合、改善に努めなければならない」「改善指導を受けたにもかかわらず、合理的理由なく改善を怠ってはならない」「業務能力に関する指導・教育を正当な理由なく拒否してはならない」「医療安全に関わる業務について、必要な水準の注意義務を尽くさなければならない」など記載されている場合が多いです。
Q.こんなことが起こるとは予想していませんでしたから、そのような記載はありません。
A.基本的には、就業規則に具体的な内容を記載し、それに基づき少なくとも3回以上指導し、指導記録も残しておくことが必須です。指導した後、1~3カ月ほど経過観察し、再指導も行います。当該職員に対して、改善の機会を与えることが重要です。配置転換はできないのですか。
Q.今以上に平易な仕事はないため、配置転換は考えられません。これだけ能力がないのですから解雇できるのではないですか。
A.仮に裁判になった場合どうなるかわかりません。裁判所は能力がないことよりも事業主がどれだけ教育・指導したかを見ます。いきなり解雇しても簡単には認められません。どうしても改善が見られない場合は、退職勧奨はどうでしょうか。あなたはうちの職場には向いていないので、他を探してみてはどうかと伝えるのです。ある事業所では3カ月分の給料を解決金として提示して退職合意に至ったケースもあります。
