
本記事は、全国保険医団体連合会が刊行する「月刊保団連」(2026年3月号)に掲載されています。
【月刊保団連】月刊保団連2026年2月号 - 全国保険医団体連合会
Q.労働基準監督署(以下、労基署)から突然「一般労働条件等に関する個別調査の実施について」という書類が送られてきました。代表者の対応を要求しています。当院のような小さなクリニックでも対応しなければいけないのでしょうか。書類には、本状到達時点で存在する資料のみでいいとはありますが、➀労働条件通知書、②就業規則、③タイムカードや時間外労働が確認できるもの、④賃金台帳(直近6ヶ月)、⑤36協定、⑥年次有給休暇管理簿などを用意するようになっています。開業して20年になりますが、こんなことは初めてです。スタッフの誰かが密告したのでしょうか。
A. その可能性はありますが、労基署は誰が密告したかは教えません。「一般的な調査だ」とだけ言う可能性が高いです。このことを労務管理を見直すチャンスだと捉えてはいかがでしょう。先生の院所のスタッフは、正職員4名、パート8名と10名以上なので、就業規則を労基署に届ける義務があります。
Q.以前、保団連が発行した『医院経営と雇用管理』に掲載されている就業規則のたたき台を基に作成したものを労基署に届けました。
A.『医院経営と雇用管理』は直近では2025年11月に改訂されていますから、これを機に見直した方がよいでしょう。
Q. 今まで就業規則を見たいと言ってきたスタッフもいませんし、職員皆満足して働いていますから、あまり気にしていませんでした。
A.皆満足していると思っているのは先生だけかもしれません。人材派遣会社の調査では看護師の8割が何らか職場に不満を持っており、スタッフ全体では6割が退職を検討したという調査もあります。これを機に労務管理を見直し、その際労務監査のプロである労働基準監督官(以下、監督官)の話をよく聞くことをお勧めします。可能であればこの際、就業規則も見直し、スタッフに周知しておくとよいでしょう。そうすればスタッフも安心して働くことができ、雇用の定着にもつながります。
Q.36協定とは何ですか。
A.労働基準法第36条に基づく「時間外・休日労働に関する協定」で、時間外・休日労働に関して交わす労使協定です。通称、「36協定」と呼ばれています。
Q. うちはめったに残業をさせないのでそんなものはありません。
A.少しでも時間外労働があれば労基署に提出する義務があります。36協定を結び労使で時間外労働することを確認したというだけではなく、大事なことは法定時間外残業は本来犯罪だとの認識を持つことが重要です。罰則規定は6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金です。監督官は司法警察職員として、逮捕や捜索差し押さえなどができます。36協定を結び労基署に届けていれば、罰せられない(免罰効果)という意味はあります。
Q.監督官が来る前に届けておいてもいいのですか。
A.それは構いません。同時に監督官は残業手当が正しく計算されているか、有給休暇がきちんと取得されているかなどチェックします。残業代や有給休暇の問題は労働者の不満が多い問題ですから、この機会にしっかり監督官からチェックしてもらった方がいいと思います。
