本記事は、全国保険医団体連合会が刊行する「月刊保団連」(2025年4月号)に掲載されています。

【月刊保団連】https://hodanren.doc-net.or.jp/publication/gekkan/2024-04/

合理的な経路かつ、公共の場でのケガなら通勤災害

Q.当院のスタッフが出勤時、玄関から出たところの階段で転倒し頭を強く打って大けがをしました。縫合し、幸い今のところは脳に異常がないとされましたが、念のため通院するように指示されたようです。通勤災害と思い労働基準監督署に労災保険の申請をしたところ、不認定と言われました。

A. 階段で転倒したということですが、そこは公道ですか。

Q.いいえ、階段の先に門扉があって門扉から公道に出ます。

A.そうするとまだ住居内にいてそこで転倒したということで、「住居と就業場所との間」ではないと判断されたようです。

Q. 以前、今回とは別のスタッフが出勤時に階段で転倒した際は、通勤災害が認められ労災給付を受けました。そのスタッフは自宅マンションの階段で転倒したのですよ。マンションの玄関をまだ出ていないのに通勤災害と認定されました。通勤災害は担当者によって認定されたりされなかったりするのでしょうか。

A.マンションの敷地内で、外部の人は誰でもはいれるようになっていなくても、マンションの住人は誰でも利用できるため公共の場所と認定され、そこは通勤経路として認められたため労災保険の通勤災害となり給付があったものです。

 マンションの場合は、自室の私有部分を出た時点で通勤経路に入ったものとして扱われたのです。

Q.通勤災害もいろいろ問題がありますね。当院はマイカー通勤を許可制にしています。あるスタッフがマイカー通勤を申請していないのに翌日が休日なので終業後そのまま旅行に行くためマイカーで出勤したことがありました。万が一事故があった時、通勤災害は認定されるでしょうか。

A.事業所でマイカー通勤を許可していなくても、当該スタッフの通勤経路が合理的であれば通勤災害と認定されます。

Q.保育所に子どもを預けてから出勤するスタッフがいます。子どもを預けた後、事故に遭いけがをした時は通勤災害となりますか。

A.この場合は、多少遠回りをしても合理的な経路と認められれば労災給付があります。

Q.例えば、あるスタッフが帰宅途中にスーパーで買い物を終え、その後当人の興味関心のあった研修会に参加した帰路で転倒した場合は通勤災害となりますか。

A.買い物を終えた後、通常の経路に戻れば日用品の購入などの後であった場合、通勤災害となります。ただし、買い物の後に研修に参加した場合は、業務上の指示ではない研修であり、日常生活上必要な行為でないので通勤災害と認められません。

東京労働局:「通勤災害について」https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/rousai_hoken/tuukin.html