本記事は、全国保険医団体連合会が刊行する「月刊保団連」(2025年3月号)に掲載されています。

【月刊保団連】https://hodanren.doc-net.or.jp/publication/gekkan/2024-04/

年金がつぶれる時は、国がつぶれる時

Q.最近ネット上で年金はつぶれないか不安が広がりました。タレントで、厚労省の年金部会委員も務めているたかまつなな氏が改革案に賛成したことに対して、ネット上で大きな話題となりましたね。少子高齢化の下で年金は本当に大丈夫ですか。

A. 確かに1965年には胴上げ型といって、20歳から64歳の9人で1人の高齢者を支え、2012年は騎馬戦型といって2.4人で1人を支え、2040年には肩車型といって1.4人で1人を支える社会になるとして不安があおられてきました。

 若者の間では「我々が年を取る頃は年金がどうなっているか分からない」という風評が広がり、フリーターなどが国民年金を滞納している事例もあります。たかまつ氏を批判している人の意見も分かりますが、私は改革案におおむね賛成です。

Q.どうしてですか。手取りが減るというではありませんか。

A.厚生年金の保険料は18.3%でこれを労使折半で支払います。ただし、これは「月給」が65万円までが保険料の対象で、上限の65万円を超えた分の月給に対する保険料率は0%となり、納める必要はありません(なお、賞与は1回150万円までが保険料の対象です)。これに賛成したことに批判が集まりました。

 確かに年収が1200万円程度だと負担が重くなり、子どもが2人も大学に行くと家計に大きな打撃となります。しかし、これは年金制度の問題だけでなく、学費が異常に高い日本の教育制度に問題があります。学費等生活費の問題と厚生年金の保険料の上限引き上げとは分けて考える必要があります。

 それよりも私が問題だと思うのはソフトバンクの孫正義さんの年収は約188億円にもかかわらず、孫さんの保険料負担割合が月給65万円の人と同じだということです。孫さんからも18.3%分をもらえば保険料は約34億円も増えます。

Q. そんなことをしたら将来の受給年金額に格差ができてしまいませんか。

A.その時は、社会保障の基本理念「1人はみんなのために、みんなは1人のために」を基に、給付上限を設けるなど議論すればいいと思います。

Q.それでも年金は心配ですね。

A. 厚労省も「年金がつぶれるときは国そのものがつぶれる時」と言っています。それに、年金の審議会の委員で年金がつぶれると言っている人は1人もいません。歴史的には国がつぶれても年金はつぶれていません。

 日本も1945年の敗戦で1度国はつぶれました。厚生年金ができたのは1942年です。当時、年金保険料を納付した人は戦後、年金を受給しました。私も戦前の年金記録を調査し、年金を受給できるようにした経験があります。

 年金制度は5年に1度、見直されます。今回、たかまつ氏の発言を機に年金に関心が集まったことは良いことです。私もYouTubeで年金問題などどんどん発信して世論を喚起していきたいと思います。

YouTube:「ダンディーすぎる社労士」https://www.youtube.com/channel/UCfILtKDi-ZmD0sjF0X7GHSg