本記事は、全国保険医団体連合会が刊行する「月刊保団連」(2024年10月号)に掲載されています。

【月刊保団連】https://hodanren.doc-net.or.jp/publication/gekkan/2024-04/

労災の休業補償は誰でも日額4090円もらえる

Q.受付の従業員がコロナになりました。労災申請すると、衛生管理上の問題があると判断され、保健所や労働基準監督署から調査されたりはしないでしょうか。

A. 労災申請したからといってそのような調査があるとは考えられません。それよりもコロナ罹患が業務災害の可能性があれば労災申請した方がいいと思います。

Q. この人は受付で医療業務者ではありませんが労災認定されますか。

A.厚生労働省のQ&Aには「医師・看護師や介護の業務に従事される方々については、業務外で感染したことが明らかな場合を除き、原則として対象」となっており、またそれ以外の労働者については、業務との関連性(業務起因性)が認められる場合に対象となるとあります。

Q. その受付の人はパートで夫の健康保険の被扶養者になっています。健康保険と給付は違いますか。

A.労災が適用されれば健康保険より圧倒的に有利です。何といっても治療費が無料になりますし、健康保険被扶養者では支給されない休業補償給付が支給されます。

Q. どのくらい支給されるのですか。

A. 平均賃金の80%が支給されます。

Q.平均賃金はどうやって計算するのですか。

A.時給者の平均賃金は、原則として、事由が発生した日の直前3カ月間に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数(歴日数)で除した金額で計算します。

 ただし、賃金が時間額や日額、出来高給で決められており労働日数が少ない場合など、総額を労働日数で除した額の6割に当たる額の方が高い場合はその額を適用します。

Q.週5日出勤で労働時間が1日3時間なので、80%となるとかなり低くなります。

A.2024年8月1日以降に適用される給付基礎日額の最低保証額は4090円です。どんな人でも1日最低4090円以上の休業補償給付が保証されます。

Q.近所で変なうわさが立つことはないでしょうか。新聞のニュースになって近所から「ばい菌」扱いされたり、子供の保育園・幼稚園から登園自粛を求められたりすることはないでしょうか。

A.コロナの初期と違って、現在はコロナに罹患した人以外への制限はなく、通常通り診療ができるので、ニュースになるようなことはありません。

 日本の国民性かもしれませんが、残念ながら国民が一致団結してこの危機を乗り越えようという機運よりも、身を危険にさらし感染対応に従事する医療関係者への不当な批判・いじめがありました。これに対し、「日本災害医学会」は抗議声明を出しました。

 一方で、イギリスでは決まった時間に玄関やバルコニーから一斉に医療従事者に対して感謝の拍手をするなどの運動が広がり、その後世界各国に広がりました。しかし、日本では全く広がりませんでした。

 「期待されることで生産性が上がる」ということは労務管理の常識です。医療従事者に対する姿勢を日本国民に考えてもらいたいものです。