本記事は、全国保険医団体連合会が刊行する「月刊保団連」(2024年8月号)に掲載されています。

【月刊保団連】https://hodanren.doc-net.or.jp/publication/gekkan/2024-04/

給料と合わせて50万円までなら厚生年金もらえます。収入の高い人は「事前確定届出給与」を活用

Q.一人医師医療法人の事業主です。来月65歳になるので年金を請求しようと思っています。年金は働いていても受けられますか。

A. これまでどんな年金に加入していましたか。

Q. 卒業後は病院勤務でしたので厚生年金に加入していました。開業後、国民年金に加入し、法人化した30年前からは厚生年金です。

A. 先生の役員報酬はおいくらですか。

Q. 月150万円程度です。

A.今のままの役員報酬ですと、老齢基礎年金は受給できますが老齢厚生年金は受け取れません。

Q. 私の知人に65歳定年退職後、再雇用で働いている人がいます。その人は給料をもらいながら老齢厚生年金を受け取っています。

A. 65歳以降の老齢年金は簡単に言えば2つあります。一つは老齢基礎年金、もう一つは老齢厚生年金です。老齢基礎年金は月収がどんなに多くても支給されます。一方で、老齢厚生年金には在職しながら受ける「在職老齢厚生年金」があり、給料と調整されます。給料と年金の合計が月額50万円以下であれば年金は全額支給されますが、50万円を超えると超えた金額の半額が年金から減額されます。先生の老齢厚生年金額はおいくらですか。

Q. 年金通知書によると月額約12万円です。

A.そうすると支給額はゼロです。

Q.厚生年金は70歳で資格喪失となりますよね。70歳から老齢厚生年金が支給されますか。

A.報酬が減額されなければ70歳になっても老齢厚生年金は支給されません。

Q.75歳になり、健康保険から後期高齢者医療制度に移行した時はどうなりますか。

A.それでも在職老齢年金の仕組みは維持され、報酬が減額されない限り老齢厚生年金が支給されることはありません。

Q.私は生涯現役でいるつもりですが、一生老齢厚生年金を受けることができないのですか。30年以上保険料を払っているのに老齢厚生年金を受け取れないとは納得できません。何とか老齢厚生年金を受給することはできないのでしょうか。

A.「事前確定届出給与」という仕組みを活用する方法があります。月々の役員報酬を25万円くらいに抑え、残りを一時金で支払うやり方です。

 先生の場合、年金が月12万円ですので、月々の報酬を50万円-12万円=38万円以下に抑えます。また厚生年金の場合、賞与の標準賞与額は1回につき150万円が上限です。平均すると150万円÷12月=12万5000円となり、そこに25万円プラスすると37万5000円。年金12万円と合わせても50万円に達しませんから、年金は全額支給されます。この「事前確定届出給与」は事前に届けることにより役員報酬となり損金算入されます。実は私もこの方法を活用し老齢厚生年金を受給しました。

Q.私の場合も当てはまりますか。

A.当然できます。ただ税務署への届け出もありますから税理士とよく相談してからにしてください。