本記事は、(株)通信文化新報が刊行する「通信文化新報」(2024年6月10日号)に掲載されています。

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「パートタイマーの3つの年収の壁」とはどういう意味ですか?

Q. 50歳のパート従業員です。現在夫の扶養内で勤務をしています。私と同じような働き方をしている人たちで、パート収入の壁の話になりました。103万、106万、130万円とあるようです。皆それぞれの意味があまりよく分かっていません。

A.あなたは収入を103万以上にならないように注意しているということですね。

Q. はいそうです。年末が近づいてくると、賃金の累計を気にして勤務を調整しています。

A. あなたの気にされている103万円の壁は、税法上の扶養であり、またあなた自身の所得税がかからないという年収です。ちなみに税法上の扶養は、配偶者控除と配偶者特別控除があり、2018年までは103万円が夫の配偶者控除が満額受けられる上限でしたが、現在は103万円を超えても配偶者特別控除により、150万円まで満額の38万円の控除が受けられます。

Q. 103万円の壁は、私の所得税がかからずにすむという額だったのですね。それならもう少し働けますね。

A.106万円と130万円については、社会保険上の扶養に係わるものです。106万円は、パートタイマーが社会保険に加入する収入の目安です。106万円の壁に該当するかどうかついては、会社の規模により決まっています。社会保険加入者数が100人超の会社に勤務していると、勤務時間、日数、雇用期間の条件に該当することで社会保険に加入するため、扶養家族でなくなります。令和6年10月からは、100人超が50人超になり対象者が拡大することになっています。

130万円の壁は、年間の収入が130万円以上の見込みになると夫の扶養から外れるものです。こちらは税法上の扶養と違い、通勤手当も含めます。

Q.見込みとはどういうことですか。

A.税法上の扶養のように、年間の累計額で調整すれば良いのではなく、毎月の収入が年間130万円に相当するかどうかで判断します。

例えば、130万÷12月=108,333…となりますから、月額が連続で超えていると130万円以上になる見込みと判定されます。その判定基準は健保組合や協会けんぽにより異なります。

Q. 税法上の扶養の話では103万円にこだわらなくても良さそうだと思いましたが、いずれ社会保険に加入することになりそうですね。収入がそれほど多くないのに、保険料負担で圧迫されるのは困ります。

A. 社会保険に加入して手取り額が減ることに対し、厚生労働省では「年収の壁支援強化パッケージ」をつくり、例えば130万円の壁への対応として、残業などで一時的に収入が増えた場合に事業主が一時的な収入の変動である旨を証明して被扶養者認定を可能にするものがあります。

強化パッケージは他にもあり、事業主側で行うものが多いのですが、年収の壁を意識せずに働ける環境づくりを支援するものですので、今後の働き方の参考になさってください。