
本記事は、(株)通信文化新報が刊行する「通信文化新報」(2025年3月3日号)に掲載されています。
【通信文化新報】https://www.tsushin-bunka.co.jp/backnumber/
原則は一人一年金。60歳代前半の年金繰り上げは要注意!!
Q.昭和36年10月生れの女性です。夫が2年前に亡くなり、遺族厚生年金を受給しながら正社員で働いていましたが、閉店のため無職になってしまいました。遺族年金だけでは心もとなく、これから正社員になるのは難しいため、パート先を探しています。今後自分の老齢基礎年金を繰り上げして生活費の足しにしようと考えています。
A.あなたは年金の加入期間と生年月日から計算して、62歳から特別支給の老齢厚生年金の受給権があります。そして遺族厚生年金を受給しているのが現在の状況です。これは一人一年金の原則により、受給額の多い遺族厚生年金を選択しているということです。ここで、あなたの計画のとおりに自分の老齢基礎年金を繰り上げ受給しますと、そこから65歳になるまでの間は遺族厚生年金が支給停止になってしまいます。(図参照)
あなたの場合は、図の上の方のパターンが当てはまります。両方は受給できません。

Q. それでは、パートで働いたところで収入が減ってしまいますね。どうしたらよいのでしょうか。
A. あなたは報酬比例部分の支給開始年齢(62歳)に到達しているので、自分の特別支給の齢厚生年金を受給して老齢基礎年金のみ繰下げることができます。
どうしてもの場合は、遺族厚生年金の額を比べて多い方を選択することになりますが、遺族厚生年金には中高齢の加算もついているので、おそらく遺族厚生年金の方が多いでしょう。
しかも繰上げをすると生涯減額された年金になってしまいますし、デメリットが大きいです。
中でも繰上げ請求した日以後は、事後重症などによる障害基礎(厚生)年金を請求することができません。(治療中の病気や持病がある方は注意。)
以上を踏まえて、やはり65歳までは働きながら遺族年金を受給するのが良いでしょう。65歳以後は老齢基礎年金と遺族年金を受給できます。ところで、もし老齢基礎年金が満額になっていなければ、今後パートで労働時間が週30時間未満で厚生年金に加入しない働き方をするならば、65歳までに任意加入して保険料を納付することで老齢基礎年金を増やすこともできます。また、これからハローワークで求職の申し込みをし、失業手当をもらっても、遺族厚生年金は停止になりません。
出典:日本年金機構「65歳前に老齢年金の受給を繰上げたいとき」(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/tetsuduki/rourei/seikyu/kuriage.html)