※本記事は、日刊建設タイムズ紙にコラム「社労士 曽我 浩の目(100回目・2023.5月)」として掲載されています。

【日刊建設タイムズ社】https://www.k-times.com/

労災事故なのに労災保険が使えない・・・ 労働保険年度更新を機に見直しを!中小企業の労災保険特別加入で命と営業を守ろう!

 板金屋さんが屋根から転落して死亡しました。ところが労基署の調査では、「契約が労働契約ではなく平米いくらと決まっているので請負契約だ。したがって労働者ではないので労災保険は使えない。」ということで遺族補償給付は一切ありませんでした。仮に労災保険の特別加入をしていれば遺族補償給付があり遺族の方もかなり救済されたでしょう。

 労基署は、業務災害の時にまずどこをチェックするかと言いますと、被災された方が労働者かどうかです。一番問題になるのは、労働者と同じように働いている取締役です。代表取締役は全く対象になりません。ヒラ取締役は状況によっては労働者扱いされることもあります。個別に判断しますから労基署も事前には教えてくれません。

 次に中小企業でトラブルの多いのは同居の親族です。労働契約と思っていても請負契約とされてしまうこともあります。契約をきちんとし労働者かどうかはっきりしない契約の人は労災保険に特別加入をしましょう。労災保険の特別加入をするには労働保険事務組合に加入しなければなりません。

 当事務所は労働保険事務組合を持っており、「一人親方」も中小企業の取締役も労災保険特別加入に対応できます。健康保険は基本的に労災事故には使えません。公的保険が使えないと医療費は莫大なものになります。労災保険を使えれば医療費は無料です。これが労災保険特別加入の最大のメリットでもあります。労働保険の年度更新の時期です。気軽にお電話ください。

熱中症で危険を感じたら ためらわずに救急車を! ~Stop!熱中症キャンペーン(5月1日から9月30日)実施中~ 

 熱中症の死亡事故の調査に立ち会ったことがあります。監督官の調査は3日間に及びました。人が一人死亡しているわけですからこれでも短いのかもしれません。死亡したのは76歳の方で、厳しい環境下でも働かざるを得ない事情のある方でした。

 別の事例としては、建設現場で交通誘導をしている方で、やはり高齢者で、頭痛・吐き気がするというので仲間が病院に運びました。ところが病院はいくら訴えても「順番通りです」ということでなかなか診てくれません。幸い手遅れにはならなかったものの間一髪でした。関係者に言わせると建設現場から救急車で行くと元請けに迷惑がかかるのではという遠慮があったということです。しかし命優先を考えれば救急車で行くべきだったということでした。実際、大病院ほどどこに行ったらいいかわかりません。熱中症の素人判断は危険です。ためらわずに救急車に頼りましょう。

自動車運転者の労働時間改善告示の改正(令和6年4月1日適用)

 時間外労働の上限規制の適用が猶予されていた自動車運転者業務について年960時間の上限が適用されるとともに、拘束時間や休息時間等についての基準の改正内容が示されました。

~トラック運転者の改定基準告示の改正~

 

 ■1年の拘束時間は3,300時間以内かつ、1か月の拘束時間は284時間以内です。

 例外として、労使協定により1年のうち6か月までは、1年の総拘束時間が3,400時間を超えない範囲内において、1か月の拘束時間を310時間まで延長することができます。また、1か月の拘束時間が284時間を超える月は連続3か月までとしなければなりません。1か月の時間外労働及び休日労働の合計時間数が100時間未満となるよう努める必要があります。労使協定で定める事項としては 、 協定の対象者、1年について各月及び年間合計の拘束時間、 協定の有効期間、 協定変更の手続等となります。

 ※「1か月」とは、原則として暦月をいいます。 ただし、就業規則、勤務割表等において特定日を起算日と定めている場合は、当該特定日から起算した1か月 でも差し支えありません。

 ■1日の休息期間1日の休息期間は、勤務終了後、継続11時間以上与えるよう努めることを基本とし、 継続9時間を下回ってはなりません。

 例外として、宿泊を伴う長距離貨物運送の場合、1週について2回に限り、継続8時間以上とすることができます。休息期間のいずれかが継続9時間を下回る場合は、一の運行終了後、継続12時間以上の休息期間を与えなければなりません。

新型コロナウイルス感染症に係る傷病手当金の申請

申請期間初日が令和5年5月8日以降の申請は医師の証明が必要となります!

 新型コロナウイルス感染症に係る傷病手当金については、臨時的な取扱い(※)として、療養担当者意見欄(申請書4ページ目)の証明の添付を不要としておりましたが、申請期間(療養のため休んだ期間)の初日が令和5年5月8日以降の傷病手当金の支給申請については、他の傷病による支給申請と同様に、傷病手当金支給申請書の療養担当者意見欄(申請書4ページ目)に医師の証明が必要となります。

 ※厚生労働省保険局保険課事務連絡(令和4年8月9日)により、全保険者統一的な取扱いとして臨時的な取扱いが行われてきましたが、今般、「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」(令和3年11月19日新型コロナウイルス感染症対策本部決定)が廃止されたことを踏まえて、当該臨時的な取扱いを終了することとされました。

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労災なのに労災保険が使えない
労災保険の落とし穴

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