※本記事は、日刊建設タイムズ 「社労士 曽我 浩の目(99回目・2023.4月)」にもコラムとして掲載いただいております。

運送業・建設業 2024年問題対応待ったなし!罰則付き時間外労働規制は2024年から実施

 建設業においては時間外労働と休日労働の合計について、規制が罰則付きで適用されます。原則は月45時間以内かつ年360時間以内ですが、特別な事情がある場合の「特別条項」で 上限規制を設ける場合は、年720時間(月平均60時間)の範囲内で、2〜6ヶ月の平均がいずれも80時間以内(休日出勤を含む)、単月100時間未満(休日出勤を含む。原則、月45時間)を 上回る月は年6回を上限とすることになりました。

 しかも2023年からは残業60時間以上の割増率が50%になります。建設業者として押さえておかなければならないのは労働時間の把握をし、残業は月60時間以内にするということです。

 建設業は現場作業が多いため、直行直帰の場合だと始業・終業が不明確です。会社から現場まで行く時間が労働時間とされる事例もありますから、始業・終業を就業規則で明確にしておくことがポイントです。

トラック運送業の場合は?

 建設業と比べるとまだ若干緩やかです。特別条項付き36協定を締結する場合の年間の時間外 労働の上限は年960時間です。時間外労働と休日労働の合計について、月100時間未満、 2~6ヶ月平均80時間以内とする規制が適用されません。時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6ヶ月までとする規制も適用されません。

 これまでトラックドライバーの労働環境は、長時間労働の慢性化という課題を抱えていました。パソコンやスマートフォンが一般化した現代では、ECを利用した商品購入やサービスの利用が当たり前の世の中になってきました。宅配便の取り扱い個数の増加によりドライバーの長時間労働が常態化していたのです。

 ネットではトラック運送業の2024年問題が大きく取り上げられています。運転手の労働時間の短縮に伴い賃金が減少し、他産業への移動が始まり運転手不足が今よりもいっそう深刻になると懸念されています。しかも運転手の高齢化が進み、長時間労働による過労死の危険性が増加します。万が一過労死と認定されると、その損害賠償額は半端ではありません。荷主に運賃の増額を要求するよう提案しても、無理無理という返答ばかりです。しかし荷主と運送業者の定期的かつ固定的な話し合いの機会を設け続けることが重要です。ほっておいても実現しませんから、国土交通省、公正取引委員会のイニシアチブが求められます。国会議員などもこの問題を国会で大いに取り上げていただきたいと思います。

中小企業に重くのしかかる社会保険料 社会保険料滞納事業所は14万社

連鎖倒産の引き金の恐れ 社会保険料の思い切った減免措置が必要

社会保険料を滞納した経営者と一緒に、年金事務所へ延納のお願いに行ってきました。年金事務所の徴収課には、社会保険料を滞納した事業所の経営者が何人もいました。直訴してもなかなかいい返事はいただけませんでしたが、少しの支払い延期をしてくれました。

社会保険の滞納は連鎖倒産の引き金になりかねません。政府として社会保険料の思い切った減免措置が求められます。

2024年4月から労働条件明示のルールが変わります

 2024年4月から、労働契約の締結・更新のタイミングの労働条件明示について、4つの事項が追加されます。

 1.就業場所・業務の変更の範囲

 2.更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容

 3.無期転換申込機会

 4.無期転換後の労働条件

関連動画はこちら

運送業界における2023年・2024年問題

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