

※本記事は、日刊建設タイムズ紙にコラム「社労士 曽我 浩の目(121回目・2025.2月)」として掲載されています。
【日刊建設タイムズ社】https://www.k-times.com/
増加する退職労働者からの未払い残業代請求
ある会社で「不明金」が発覚し、当事者と思われる社員が退職しました。会社は他の社員の手前、当該者に損害賠償請求しました。とはいえ、もともと金銭管理が厳密でなかったため、不明金が出た原因はよくわかりませんでした。その会社は経理のみならず、労働時間管理もいい加減でした。それでも社員トラブルなど経験したことはなく、就業規則も20年前のものでした。
元社員は弁護士に相談に行きました。弁護士は会社に対し、話し合いで解決したいと提案してきました。会社側は「解雇予告手当相当分に加え、もう一か月分の賃金40万円の合計80万円でどうか」と提案しました。なんと弁護士の提案は1000万円を超えていました。就業規則に基づき残業代3年分を計算すると、確かにそのぐらいにはなってしまったのです。中小零細企業では、残業代トラブルなど経験したことがない会社がほとんどです。「よそより多く払っているからいいんだ」とか、「〇〇手当の中に残業代が含まれている」などという会社の身勝手な主張はもう通りません。
労働時間管理と就業規則を見直し残業代計算をわかりやすいものにし、社員に納得してもらうことが大切です。
「生きる喜びと、人としての尊厳」を提案するフランスのバカンス
先日、労働保険事務組合から珍しく講演を頼まれました。テーマとして「最近の精神障害での労災申請激増の裏には労働者の脳疲労、休養不足がある」と主張してきました。過労死する人は例外なしに有給休暇を取っていません。過労死は英語で「カローシ」といいます。「ボンサイ」「ツナミ」などと並んで数少ない、日本語が国際語になったものです。過労死をなくし労働者が最高のパフォーマンスを発揮するには有給休暇の完全取得が必要です。
関与先のとある建設会社では、労働基準監督官が臨検に入りました。監督官は「有給休暇の管理簿は?」「実績は?」と尋ねてきました。その会社では5日の有給休暇すら取れていませんでした。
つまり、是正勧告です。放っておくと罰金刑の可能性もあります。日本では有給休暇の年5日取得を罰則付きの経営者の義務にし数年が経ちます。これまで有給休暇取得率が50%に到達していなかったところ、62%まで上がりました。
ところで、フランスには「有給休暇取得率」という考えはありません。100%が当たり前だからです(勤務年数に関わらず、法定25日。さらにRTT休暇(労働時間短縮休暇)が3週間あるため計8週間/年。私傷病では別途、病気有給休暇が法律で保障されている)。フランスでは1930年代、当時の内閣が「労働者にも休息と余暇を享受する権利がある」としてバカンスを導入しました。これがバカンス文化の始まりです。ユニクロの柳井会長兼社長も「休みを取らないのは罪悪」と主張しグローバル人材を集めています。有給休暇完全取得こそ「日本経済再生のコロンブスの卵」です。
令和7年度の年金受給額は前年度から1.9%引上げ
総務省から、本日(1月 24 日)、「令和6年平均の全国消費者物価指数」(生鮮食品を含む総合指数)が公表されました。
これを踏まえ、令和7年度の年金額は、法律の規定に基づき、令和6年度から 1.9%の引上げとなります。
出典:厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」(https://www.mhlw.go.jp/content/12502000/001383981.pdf)
育児休業中に退職の意向を申し出た社員への対応
育休中の従業員「育休中ですが、転職先が決まりました。子育てが落ち着いてから来ていいと言われました。育休は3か月後までの予定ですから、期間いっぱい休み、5月末で退職しようと思っています。育児休業給付金は、ここを退職するまでもらえますよね?」
総務担当者「えっ?育児休業給付金は、今の職場に復帰する予定がある人のために給付されるものだったような…?会社として損はないけれど、あまり良い気はしないし、復帰しないのをわかっていて手続きすると、そもそも不正受給になってしまうのでは?」
社労士「このような場合、本人が退職を申し出た日の支給単位期間までの受給となります(*退職日までもらえるわけではない)。育休を取得するのは復帰が前提にあります。育児休業給付金については退職日ではなく、あくまでも退職の意思を表明したタイミングまでの受給になります。育休中の従業員が退職の意向を示しつつ、給付金をもらう目的で復帰予定日まで退職日を伸ばそうとする場合、会社として、社会通念上の育休の主旨を伝えましょう。その際、会社側が退職日を指定すると、解雇にあたりますので、控えましょう。以前にも、退職をわかっていながら育児休業給付金を受給していたかの問い合わせが、ハローワークからありました。」
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