【2023年3月5日 岩手県保険医新聞】
㉘正社員とパートで時給単価が1.3倍違う、同一労働同一賃金に反しないか

半年前に雇用した事務に関してはベテランのパート職員から1年先輩の正社員は賞与も含めれば年俸300万円、年間の総労働時間は約2千時間、時給にすれば、1500円になる。
ところがパートの時給は1000円。そのパートが言うには仕事の効率は同じどころかむしろそのパート職員のほうがミスもなくしっかりしている。
これは同一労働同一賃金の原則に反するのではという苦情が寄せられました。パートの方からすればもっともな苦情です。しかし裁判になればオクの場合この格差は不合理な格差とは言えないということになります。

このようになるのは日本の雇用文化の特殊性があります。欧米はポストに値段が付きそのポストが空けばそのポストにあった人を採用します。日本の場合正社員を雇用sるときはその人がどんな実績があるかなどあまり問題にせず出身校が一流校であれば地頭がいいだろう、頑張り屋だろう、要領もいいだろうということで採用してしまいます。長期雇用システムの下で育てながら将来性も考慮して賃金を決めます。

これに対し長期雇用を前提としないパートの場合の賃金は①同業他社の時給相場、②近隣求人の時給相場、③労働市場の時給相場で決めます。したがってこのような賃金格差は納得できない人も多いと思いますが、不合理なものではないということになります。ポストに値段が付く欧米と、人に値段が付く日本では同一労働同一賃金といっても「文字通り」というわけにはいきません。ちなみに欧米ではポストがなくなれば他の部署というわけにはいきません。契約違反になります。日本ではポストがなくなれば解雇というわけにはいきません。他の部署に転勤できないのか、他の仕事はないのかといってあくまでも雇用の維持が求められます。他の地域に転勤になっても多くの労働者は従います。

曽我社会保険労務士事務所 所長 曽我 浩