本記事は、全国保険医団体連合会が刊行する「月刊保団連」(2024年11月号)に掲載されています。

【月刊保団連】https://hodanren.doc-net.or.jp/publication/gekkan/2024-04/

有休でリフレッシュしてもらい、最高のパフォーマンスを引き出す

Q.職員が30名ほどの診療所です。体調があまりよくないと言ってよく有給休暇(以下、有休)を取る職員がいます。一方全く有休を取らない職員もいます。忙しい時に有休を取られると他の職員にしわ寄せが行きます。不満も出てきます。有休を取りすぎる職員にどのように対応すべきでしょうか。

A. 有休は権利ですから取るなとは言えません。せいぜいできることは「時季変更権」を行使するだけです。これが認められるのは正常な業務に支障を来す時です。いつも忙しいところでは業務に支障を来さない日を見つけるのが大変です。

Q. 最近では有休がなくなり他の日に欠勤することもあります。うちの就業規則に解雇事由として「出勤常ならず改善の見込みがない時」とあります。これは解雇事由になりませんか。

A.所定労働日数の8割以上出勤していれば解雇は困難でしょう。

Q. しかし所定労働日数の2割も休まれてはたまったものではありません。

A.有休は所定労働日数の8割以上出勤すれば受給できます。例えて言えば、これはきちんと出勤してくれたという褒美です。褒美をもらえるほど出勤している人を、たまに欠勤するからと言って、それを理由に解雇することはできません。

Q. しかし全く有休を取れないスタッフから不満が出ます。

A. どうして有休を取れないのですか。

Q.忙しくてその人が休むと医療事務が回らないのです。

A.それはそれで問題ではありませんか。その人が病気でもしたら大変なことになります。後継者も育ちません。大企業によっては幹部に2週間強制的に休みを与えその間、一切連絡を禁止し後継者の予定者にその仕事をさせるところもあります。その人にしか分からない仕事をつくり、引継ぎができない担当者は仕事が整理されていない可能性があります。不正の温床になることもあります。

Q.私の若いころは有休などそんなに取りませんでした。

A.毎年11月は「過労死等防止啓発月間」です。毎年全国で11月に厚生労働省主催で「過労死等防止対策推進シンポジウム」が行われます。過労死する人は例外なしに有休を取っていません。以前は、有休取得は権利でしたが、現在は5日間の有休を取得させることは経営者の義務です。有休を全く取らせないのは労基法違反であり、労働契約法に基づく安全配慮義務違反でもあります。

Q.経営者には義務ばかりですね。

A.労働者にも「自己保健義務」があります。罰則はありませんが労働者には健康な体で最高のパフォーマンスを発揮していただきたいものです。保険医協会・医会でもおなじみの精神科医の香山リカさんは「先生はよく有休を取りますね」と言った患者さんに「私はあなた方に最高の医療を提供したい、そのためには有休を取ってリフレッシュして診療するのよ」と言っていました。みんなが有休を十分に取れるような職場にしたいものです。ヨーロッパでは有休の取得率という考え方はありません。100%が当たり前だからです。