本記事は、(株)通信文化新報が刊行する「通信文化新報」(2024年10月7日号)に掲載されています。

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併給できるが、働いていた時の賃金以上の額はもらえない

Q. 私は建築現場で働いており、現在45歳です。仕事中に大きな事故に巻き込まれてしまいました。治療は終了したものの後遺症が残り、障害等級6級との認定を受け、労災からの障害補償年金を受給しています。この労災保険からの障害補償年金を受給しながら、厚生年金からの障害厚生年金も受給することは可能でしょうか。

A.労災保険からの障害補償年金と、厚生年金からの障害厚生年金は全く異なった制度となるため、両方を受給することが出来ます。

Q. 両方とも満額受給できるのでしょうか。

A. 同一の傷病で労災保険と障害年金の両方から支給を受けられる場合、どちらからも満額の支給を受けることができるわけではありません。両方の制度において障害認定された場合障害厚生年金は満額受け取ることが出来ますが、労災保険は減額されます。ただし、減額とは言っても、調整された障害補償年金と障害厚生年金との合計が、調整前の障害補償年金の額よりも低くならないよう考慮されています。

Q. 何故減額調整されるのでしょうか。

A.両制度からの年金が未調整のまま支給されると、受け取る年金額の合計が、被災前に支給されていた賃金より高額になってしまうためです。また、保険料負担について、厚生年金保険は被保険者と事業主とが折半で、労災保険は事業主が全額負担していることから、事業主の二重負担の問題が生じてしまうためです。

Q.具体的に調整の内容について教えてください。

A.減額率は労災の障害等級等、被災者個人の状態に応じて設定されるので一定ではありません。厚生年金のみの方の減額率は0.83となりますので、労災からの障害補償年金の額は83%に減額されます。

厚生年金に加入したことがなく、国民年金からの障害基礎年金と障害補償年金を受給する人については、障害補償年金が88%に減額されます。