本記事は、(株)通信文化新報が刊行する「通信文化新報」(2024年9月30日号)に掲載されています。
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給与が変わっても、社会保険料すぐには変わらない
Q. この度、社内での昇進となり、役職手当として毎月5万円が付与されることとなりました。給料が上がったことはとても嬉しいのですが、それに伴って、社会保険料もどのように上がるのか気がかりです。
A.昇進されたのですね!おめでとうございます。給料はいつから上がるのですか?
Q. 7月支払いの給与から上がります。
A. そうなのですね。社会保険料は通常、4月~6月の給与で決まり、1年間変わりませんが、そのように4月~6月以外で変わったときや、勤務時間などの労働条件が変わったときに、いくつかの条件を満たす場合は、事業主が”月額変更届”を提出することになります。
Q. ”月額変更届”ですか?初めて耳にしましたが、どのような手続きなのでしょうか。
A.”月額変更届”は標準報酬月額の”随時改定”という手続きをするために出す書類の略称です。随時改定とは、1年に1度行われる標準報酬月額の定時改定を待たずに、保険料の算出の基準となる標準報酬月額の変更の届け出を行うことを指します。
定時改定とは、毎年4月~6月までの給与額をもとに行う、標準報酬月額の定期的な見直しのことです。一方、随時改定は、主に昇給や雇用契約の変更などの要因で、毎月支給される給与に変更があった際に、随時改定の条件に当てはまったときに行います。
Q.なるほど。標準報酬月額を変更することで、社会保険料も変わっていくのですね。今回の私の昇給は、随時改定に該当するのでしょうか?
A.いい質問ですね!随時改定の条件は3つあります。まず1つ目に、給与の固定的な賃金に変動があるか、というものですが、今回は役職手当として毎月5万円が付与されるということなので、1つ目の条件はあてはまります。一方、残業代や深夜手当など、勤務の仕方により金額が毎月一定でないものは固定的賃金に含まれません。
2つ目に、変動があった給与支払い日から引き続く3か月とも支払基礎日数が17日以上か、という条件があります。
支払基礎日数は、月給制で欠勤控除がない場合は歴日数となりますが、月給制で欠勤控除がある場合は、所定労働日数から欠勤日数を引いた日数、日給制や時給制の場合は出勤日数となります。
3つ目の条件は、変動月から引き続く3か月間の平均の報酬月額に今までの等級から2等級以上の差が出たか、ということなので、該当するかどうかは9月の給与が確定するまで判断できない、ということになります。
Q.そうなのですね。社会保険料が変わるのは、単純に給与が変わったからというわけではなく、そういった条件がそろったときなのですね。初めて知りました。
A.そうなのです。つまり、2つ目と3つ目の条件に当てはまるかどうかは3か月間の給与で様子を見て、条件3つすべてに当てはまる場合に、月額変更届を提出し、給与が変動した最初の支給月から4か月目の社会保険料で随時改定をすることで、社会保険料が変わるということになります。
Q.勉強になりました。今回の昇給での社会保険料が変わる時期の見通しがついたことで少し安心しました。年金額にも影響することなので、仕組みを正しく理解することが大切だと改めて実感しました。