本記事は、全国保険医団体連合会が刊行する「月刊保団連」(2026年9月号)に掲載されています。

【月刊保団連】月刊保団連2026年9月号 - 全国保険医団体連合会

Q.事務スタッフより勤務形態をフルタイムからパートタイムへの変更の申し出がありました。夫の仕事の都合で、これまで夫が担っていた親の介護ができなくなったとのことです。日常的に介護が必要な家族がいるにもかかわらず、会社都合のみでの部署異動を実施することはできるのですか。

A. それは労働契約の内容次第です。例えば、就業規則に「事業所は、業務上必要がある場合に、労働者に対して就業する場所及び従事する業務の変更を命ずることがある」旨の規定があり、それがスタッフに周知されている場合は、事業所側に配置転換命令権があるといえます(労働契約法第7条本文)。ただし、濫用的な命令権の行使は許されません。また、就業規則に配置転換命令権の定めがあっても、従業員との間で特別な合意がある場合は、会社に認められる配転命令権はその後合意の範囲内に限定されます(労働契約法第7条ただし書き)。しかし実際には限定されているとは言い難いケースもしばしばです。

Q.部署異動は一定程度仕方がない面も理解していますが、当院にとっても当該事務スタッフは、重要な役割を担う大切な存在なのです。夫側の都合だけ主張されても困ります。

A.お怒りはもっともですが、日本の旧来型の企業風土においては、他のOECD諸国では訴訟になってもおかしくないような会社都合で物事が決められることが平然と行われています。以前、私の事務所と取引のある銀行の新担当者が着任のあいさつに来てくれました。新担当者に今回の転勤を内示されたのはどのくらい前かと聞いたら3日前ということでした。働く者よりも、企業側の都合が優先された組織運営と言えるでしょう。

Q.当院は女性スタッフが多く、また今回の夫側の勤務内容変更などにより妻側の働き方が左右されてしまうのは、負担が不均衡な気がするのですが……。

A.日本社会のジェンダー不平等という問題ですね。改善すべきところは複数ありますが、1つとして男性が主体的に家事・育児を担う必要があります。本田由紀・東京大学教授は、女性と比べ日本の男性の家事労働(無償労働)時間の少なさを指摘しています。内閣府の男女共同参画局の調査結果にも示されています。本田教授は、5月29日の国会前デモのスピーチで、いまだ日本社会に巣食う男女の不平等構造が多くの人々の生きづらさにつながっていると批判しています。このスピーチはネット上で大変話題になりました。男女の賃金格差、選択的夫婦別姓を認めないなどジェンダー不平等は、労働問題にとどまらない。人権問題だと認識することが重要です。

Q.日本のジェンダーギャップ解消のために、労働環境をどうするべきだと思いますか。

A.まず、労働者の時間短縮と賃上げだと思います。大企業に貯めこまれている内部留保を活用すれば賃上げの余地は十分あると思います。

Q.ところで、先生は料理をしていますか。

A.もちろんです。ただ、私の作った料理を妻は気味悪がって食べません……。