本記事は、(株)通信文化新報が刊行する「通信文化新報」(2025年1月20日号)に掲載されています。
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定年退職後の再雇用の場合、特例ですぐに社会保険料が下がることも
Q. 今年の9月で60歳を迎え、9月いっぱいで定年退職します。10月からは再雇用という形で引き続き勤務しますが、出勤日数も減りますし、給与が今までよりもがくっと下がってしまいます。以前、給与が下がったときは社会保険料がなかなか下がりませんでしたが、今回の社会保険料はどうなりますか?
A.社会保険料は「同日得喪」という手続きをして、再雇用された月の社会保険料から変更することができます。
Q. 同日得喪ですか。どういう手続きなのでしょうか?
A. その名の通り、厚生年金保険と健康保険の被保険者資格を同じ日に喪失と取得をする、というものです。
通常、勤務期間の途中で固定給が変更になった場合、その後3か月間の給与で2等級以上の差が生じない限り社会保険料は変わりませんが、60歳以上の被保険者で給与が下がった場合には、1等級でも差が生じればその月の社会保険料から下げることができるという特例なのです!
Q.社会保険料が1か月でも早く下がるのはとてもありがたいです。同日得喪をするためには、住民票とか、何か用意しなければならない書類があるのでしょうか?
A.同日得喪の手続きは、「資格喪失届」と「資格取得届」を添付書類と併せて同時に年金事務所や健保組合へ提出するというものですが、いずれも事業主から提出するものなので、被保険者自身が用意しなければならない書類は、海外居住の場合など例外がありますが原則はありません。
事業主が用意する添付書類としては、60歳を定年とする旨の規定がある就業規則、退職日の証明として退職辞令、再雇用された日の証明として雇用契約書などがあります。
Q.給与が下がることに生活の不安を感じていたので、書類をたくさん集めることなもなく、すぐに社会保険料が下がると知っただけでも安心です。
A.なお、同日得喪の手続きをする時点で被扶養者がいる場合は、被保険者の資格喪失とともに扶養も外れてしまうため、資格取得とともに再度、扶養追加の手続きを行う必要があります。
つまり、健康保険証が新しいものに変わるわけです。その際には、被保険者自身が用意しなければならない書類がある場合があります。
Q.わかりました。扶養については注意が必要だということですね。
A.60歳以上65歳未満の被保険者については、社会保険の同日得喪の手続きの他にも、60歳時点に比べて給与が75%未満に下がった場合に雇用保険から給付される「高年齢雇用継続基本給付金」などもあります。
普段、給与から天引きされている社会保険・雇用保険について、どんな場合にどんな保険給付が受けられるのかなど、関心を持つことはとても大切です。