本記事は、(株)通信文化新報が刊行する「通信文化新報」(2024年7月15日号)に掲載されています。

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仕事が原因の労災事故。労災保険と厚生年金等が併給可能?

Q. 主人が業務中に仕事が事故で亡くなりました。私は妊娠中の為、産休と育休を取得予定です。また3歳の子供がおります。業務上の災害について、労災保険からはどのような補償を受けられますか。

A.業務上の事故で亡くなった場合、労災保険から「遺族補償給付」及び「葬祭料」が支給されます。

遺族補償給付は、「遺族補償年金」と「遺族特別年金」があります。

遺族補償年金は、御主人が亡くなった当時に生計を維持していた妻・子に支給されます。額は、受給資格者の数によります。2人の場合は、給付基礎日額の201日分になります。また、胎児であった子を出生した場合は、出生月の翌月より額の改定があり223日分となります。「給付基礎日額」とは、原則として、労働基準法の平均賃金に相当する額をいいます。平均賃金とは、業務上の死亡の原因となった事故が発生した日(賃金締切日が定められているときは、発生日の直前の賃金締切日)の直前3か月間に御主人に対して支払われた賃金の総額(ボーナスや臨時に支払われる賃金を除く)を、その期間の暦日数で割った1日当たりの賃金額です。

例えば御主人が月に30万円を給料として受け取っていた場合、給付基礎日額は1万円ということになります。尚、子につきましては、18歳に達する日以降の最初の3月31日までが対象となります。妻・子がいる場合、それぞれに給付基礎日額が支払われるのではなく、妻がいる場合は、妻に223日分支給されますという事です。

次に遺族特別年金の額は、遺族補償給付と同様、受給資格者の数によって算定基礎日額の201日分・223日分となります。「算定基礎日額」とは、業務上の死亡の原因である事故が発生した日以前1年間に御主人が事業主から受けた特別給与の総額を算定基礎年額として365で割った額です。特別給与とは、給付基礎日額の算定の基礎から除外されているボーナスなど3か月を超える期間ごとに支払われる賃金をいい、臨時に支払われた賃金は含まれません。

葬祭料については、315,000円に給付基礎日額の30日分を加えた額、もしくは給付基礎日額60日分のうち、どちらか高い金額が給付されることになります。御主人が先程の給付基礎日額が1万円であった場合、受け取れる葬祭料は、315,000円+(1万円×30日分)の方が給付基礎日額60日分より高い金額なので、615,000円ということになります。

Q. 生活が大変なので、年金支給ではない方法はありませんか。

A. 遺族補償年金前払一時金制度があります。

この場合、給付基礎日額の1000日分を上限として、200・400・600・800・1000日分から受給額を選び受給する事ができます。前払一時金と遺族補償年金は同時に受け取れませんので、前払一時金の額に達するまで、遺族補償年金は支給停止となります。前払一時金を受給したい場合、原則、遺族補償年金の請求と同時に請求を行わなければなりません。

ただし、遺族補償年金支給開始の通知があった日から1年以内であれば、年金受給後でも前払一時金の請求をすることができます。遺族補償年金前払一時金の請求は一度だけしかできませんので注意が必要です。本当に前払いが必要な時に請求するようにしましょう。

尚、この場合は、給付基礎日額の1,000日分から既に支給された年金の額の合計額を減じた額の範囲で請求していただくことになります。

Q.労災保険の遺族補償給付を受給した場合、社会保険の遺族年金も受給する事は出来ますか。

A.貴方の御主人が受給要件を満たしていた場合、遺族基礎年金及び遺族厚生年金が支給されます。

この場合、厚生年金等の年金が被災者の生活の基本的部分をカバーするものである為、全額支給することが望ましいと考えられていることから、厚生年金等の年金が全額支給され、労災保険が減額されることになります。

受給資格者の年齢によって、支給要件等が異なってきます。詳しくは、お近くの年金事務所にご相談下さい。