※本記事は、日刊建設タイム紙にコラム「社労士 曽我 浩の目(111回目・2024.4月)」として掲載されています。

【日刊建設タイムズ社】https://www.k-times.com/

改定するも物価上昇に追い付かない年金

 公的年金の最大のメリットは物価スライドです。物価が上昇しても現在の価値が保証されます。また、民間の保険と違い、事務経費に保険料は使っていません。すべて税金です。それと年金にはかなりの国費が投入されています。基礎年金は半額国費です。

 ところが今公的年金のメリットが危なくなっています。公的年金の2024年度の支給額は、物価や賃金の上昇を反映して今年度より2・7%引き上げられます。しかし、物価上昇は3.2%ですから実質目減りです。なぜこのようなことが起きるかと言いますと将来に備えて今年金を払いすぎるわけにはいかないということで「マクロ経済スライド」という仕組みがあるからです。消費税、介護保険料も値上がりますから高齢者にとっては一層厳しいものになります。これまで苦労して日本を支えてきてくれた高齢者に安心した老後を提供したいという国民の願いは届きません。

 先日フランスに20年以上滞在した人に会いました。こんな事フランスで起きたら暴動でしょうと語ってくれました。年金の積立金総額は219兆円です。この積立金の運用益は「20~22年度で約36兆円」です。この資金は年金給付に使えます。日本の年金給付総額は約56兆円です。年金の財源は十分にあります。

 この他に高額所得者に優遇されている厚生年金保険料を私達と同じように支払ってもらえば年金財政も潤います。ソフトバンクグループのロナルド・フィッシャー副会長は年収32億6,600万円です。しかし支払っている厚生年金保険料は全額で月額11万8950円年間で150万円弱です。月収65万円の給料者と同じです。これは厚生年金の保険料の標準報酬の上限が決まっているからです。私達と同じような保険料を支払えば保険料はこの人だけで約6億円となります。

建設・運輸・医療 2024年問題待ったなし!残業問題の核心は1時間単価の算出方法 残業計算対応はお早めにご相談ください

 2024年問題の核心は建設業、運輸、医療の業界で、これまで取られていた労働時間に関する猶予措置が基本的になくなるということです。それに伴い残業問題が表面化してきました。これまで労働者の不満が表面化してこなかったサービス残業問題も表面化してきました。

 労基署の調査で不払残業が明らかになった事業所で全員について6か月分遡及して未払い残業代を支払うよう是正勧告がありました。残業代問題の核心は「労働時間とは何か、ということと1時間単価の算出方法です。」建設業、運送業ではどこからが労働時間かはっきりしません。会社から現場まで行く時間は労働時間か労基署でも判断が分かれます。労使話し合って決めれば一応それを尊重してくれます。運送業において荷待ち時間は労働時間です。

 定額残業代は裁判になると認められずに年収400万円の労働者に未払い残業代400万円を支払った運送会社もありました。裁判になると労力と費用が大変です。給料計算は長年行っていると知らず知らずのうちに残業代の計算がいい加減になってしまうこともあります。ぜひ早めに一度ご相談ください。

健康保険料、3月(4月納付分)から変更!(協会けんぽ)

  健康保険料、介護保険料の見直しが行われ、令和6年度の協会けんぽの保険料率が決定されました。医療保険分においては、平均保険料10%が維持され、引上げとなるのが24支部、引き下げとなるのが22支部となります。神奈川支部のみ、前年と同様です。介護保険料率は1.82%→1.60%と引き下げられます。

【参照】全国健康保険協会 令和6年度都道府県単位保険料率

 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g7/cat330/sb3130/r06/240205/ 

令和6年雇用保険料率は令和5年度から変更はありません

  令和6年4月1日~令和7年3月31日までの雇用保険料率は以下の通りで、令和5年から変更はありません。

【参照】厚生労働省 令和6年度の雇用保険料率について~令和5年度と同率です~

https://www.mhlw.go.jp/content/001211914.pdf

令和6年労災保険料率について

 労災保険料率が業種平均で0.1/1000引き下げられます。(4.5/1000→4.4/1000)全54業種中、引下げとなる業種が17業種、引上げとなる業種が3業種です。

 一人親方などの特別加入に係る第2種特別加入保険料率を改定します。全25区分中、引下げとなるのは5区分です。具体的な5区分は「個人タクシー、個人貨物運送業者、原動機付自転車又は 自転車を使用して行う貨物の運送の事業」「建設業の一人親方」「医薬品の配置販売業者」「金属等の加工、洋食器加工作業」「履物等の加工の作業」です。

 請負による建設の事業に係る労務費率(請負金額に対する賃金総額の割合)を改定します。事業別の改定案は、鉄道又は 軌道新設事業は現行24%→改定案は19%、その他の建設事業は現行24%→改定案は23%となっております。

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