
本記事は、全国保険医団体連合会が刊行する「月刊保団連」(2026年1月号)に掲載されています。
【月刊保団連】月刊保団連2026年1月号 - 全国保険医団体連合会
Q.10年間も務めてきた理学療法士の職員が突然、退職すると言ってきました。しかも引き継ぎ終了後、1週間後から1カ月間の有給休暇を取得後に退職すると言ってきました。こんな理不尽なことを認めなければいけないのでしょうか。
A. 辞めると申し出があった以上、退職は認めざるを得ません。
Q.当院の就業規則は「3カ月前に申し出ること」となっていますよ。
A.民法第627条で申し出から14日すれば有効となっています。就業規則より民法が優先しますから退職は認めざるを得ません。
Q. 私が我慢できないのは、これまで散々いろいろなことを教育しかわいがってきた職員にこういうことをされたことなのです。しかも次に転職するところも決まっていて、有給休暇取得中にそこに勤めるようになっているということです。うちの就業規則には許可なく兼業してはならないことになっています。それに違反していませんか。
A.確かに本業への支障、疲労により業務効率が低下したりするなど、労務提供に具体的な支障が出たり、秘密情報の漏洩、競業・転職先が競合他社で企業の技術やノウハウが流出するリスクがあるなどの場合は、処分の対象になりますが、基本的に休暇中は何をしようと自由ですから処分も難しいかと思います。
Q.そうですか……。それならこのような職員はいつまでもいてもらいたくないので解雇することはどうでしょうか。
A.解雇は30日前に予告するか解雇予告手当を支払えば労働基準法上は有効ですが、実際これが仮に裁判になると「客観的合理的な理由がありかつ社会通念上相当である」(労働契約法第16条参照)ことを立証しなければなりません。多くの場合、困難を強いられることとなります。私の関与先も解雇を巡る裁判をしていますが、中小企業者においてこのケースの裁判は全く時間とお金の無駄です。ただ、先生のお気持ちも理解できますので、「退職勧奨」を提案します。
Q. どういうことですか?
A.例えば、あなたはうちに合わないから引き継ぎ次第すぐに辞めてくれないかとお願いすることです。つまり、これが退職勧奨です。
Q.それは、解雇ではないのですか。
A.相手の意思に委ねるので解雇ではありません。先生からお願いして、相手が合意するということがポイントです。事実上の解雇だと言ってトラブルになることもありますから、以前も紹介しました「退職合意書」を取っておくことが大切です。「退職合意書」が必要な方は曽我事務所のホームページからダウンロードできます。
Q.有給休暇はどうするのですか。
A.話し合った上で買い取ることも1つの道です。
Q.有給休暇の買い取りは違法ではないのですか。
A.原則は違法です。しかし、例外として、消滅する前や退職時に未消化の場合などは認められます。
