※本記事は、日刊建設タイムズ紙にコラム「社労士 曽我 浩の目(116回目・2024.9月)」として掲載されています。

【日刊建設タイムズ社】https://www.k-times.com/

解雇退職・残業代請求をめぐるトラブル -安易な解雇は危険!就業規則の見直しを-

 ある社長さんから、「高卒者を新卒で採用したが、5つある工場のどこへ行かせても役に立たない。もう我慢の限界で、解雇したい」という相談を受けました。

 私は「そんなことで解雇は無理です」と助言しました。

 しかし、社長さんは「18年も我慢したのだから十分だ。たとえ裁判になっても、自身が法廷で説明すれば裁判官は必ず分かってくれる」と言い、能力不足社員を解雇しました。

 案の定、裁判になり多額の費用をかけ弁護士に依頼しましたが、社長さんはあえなく完敗。裁判は1年間かかったため、その間の補填として解雇した社員に1年分の給料に等しい額を支払うことになってしまいました。

 能力不足での解雇は、中小企業ではまず不可能に近いと思ってください。「能力不足」を主張したいならば、会社が従業員に求める能力を明確にし、どこが不足しているかハッキリさせ なければなりません。

 裁判官は、一般企業で勤めた経験がない方がほとんどですから、中小企業経営者の気持ちを理解することは難しいです。

 あなたの会社に問題社員がいるときは、就業規則に基づき書面で注意しましょう。改善が見込まれなければ退職勧奨をします。解雇は最終手段だと思ってください。

激増の予感 -残業代のトラブル-

 ある労働者がパワハラを受け退職に追い込まれました。「パワハラを受けたことに対する慰謝料を請求したい」と法律事務所に相談にきました。

 パワハラを証明するのは難しく、慰謝料の相場も非常に低いです。私の経験ではせいぜい10万~20万程度です。

 そこで弁護士の助言は「未払い残業代を請求する手段を取る」でした。

 例えば建設業では、労働時間の把握がいい加減です。会社に集合し、皆で車に乗り合わせ現場に向かう――このような時間は労働時間に算入されていないことが多いのです。

 仕事の打ち合わせなど一切せず、ただ移動しているだけの時間であれば、労働時間でないとされる場合もあります。しかし、一度会社に集まって現場に向かっているのだから、明らかな 労働時間だと主張する弁護士もいます。

 きちんと把握されていなかった労働時間が残業代未払いとして認められれば、莫大な金額になります。

 数年分が積もり積もって、多くて一人あたり数百万の支払いを命じられた事例もあります。

 残業代トラブルは、大きく以下の2つが原因で長引きます。

 ・労働時間の把握がなされていないこと

 ・就業規則・賃金規定が古く、残業代の一時間単価が算出できない

 

 労働時間の把握は基本的なことです。しっかりと実践したうえで、就業規則・賃金規定を今一度、見直しましょう。残業代の支給ルールは労働者に説明し、合意を取ることが大切です。

推してます みんな笑顔の 健康職場 ―令和6年度全国労働衛生週間―

 近年、メンタルの病気で長期休業する社員への対応に悩む企業からの相談が激増しています。メンタル休職の原因の大半はパワハラです。

 パワハラとは「職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与え、または職場環境を悪化させる行為」と定義されています。

 やっかいなことに、パワハラをする人は「自分がパワハラをしている」という自覚がありません

 

 現在、問題となっている兵庫県知事のように「冷淡・罪悪感なし・自己中心的」な人に、反省を促しパワハラをやめさせるということは期待できません。

 「部下に配慮してください」「思いやりを持ってください」とお願いしたところで、もともとそんなものは持っていないのですから、注意しても徒労に終わります。

 このような人に立ち向かうための武器は何といっても就業規則です。パワハラ防止規定を策定し、それに基づき注意し、対処していくしかないのです。

 または、社内で定期的にパワハラに関する講習会を開き、従業員の理解を深めることも有効です。

 私はこれまで各種団体・機関でのパワハラセミナーを数多く行ってまいりました。ご希望の場合はお気軽にご連絡ください。

令和6年10月~ パート・アルバイトの社会保険適用拡大(被保険者数51人以上の企業も対象)

 令和6年10月から、厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業等で働く短時間労働者の社会保険加入が義務付けられます。

 【参照】厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト

 https://www.mhlw.go.jp/tekiyoukakudai/

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