本記事は、(株)通信文化新報が刊行する「通信文化新報」(2024年12月23日号)に掲載されています。

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前の病気での手当金が終わっても、退職する前に新たな病気で手当金をもらい始めればその後も受給可能

Q. 脳卒中の後遺症で下半身が麻痺し、現在は休職中です。健康保険から傷病手当金を受給しています。来月で受給期間を満了します。リハビリもちょうど終わりが見え、復職しようと思っていた矢先、検診で大腸がんが見つかりました。治療のため、またしばらく働けそうにありません。今後の収入面が不安です。どうなってしまうのでしょうか?

A.傷病手当金では、傷病ごとに受給期間が決定します。脳卒中と関連のない疾病とみなされれば、新たに傷病手当金を1年6カ月間、受給できます。

ただし、複数の傷病で重複する期間に申請する場合は、異なる傷病だからといって、手当金を二重に受け取れるわけではありません。日額の高い傷病の金額が支給され、その他の傷病についての手当金はその期間、支給されたものとみなされます。日額は手当金の支給開始以前、直近の被保険者期間(12ヵ月間)の各月の社会保険料等級によって変わります。

Q. しかし、会社に状況を伝えたところ、「あなたは近く、休職期間を満了するので、復職できないのであれば、自然退職になる」と言われてしまいました。会社を辞めても傷病手当金を受給できるのですか?

A. 次の条件を満たせば受給できます。

①退職日までに被保険者期間が継続して1年以上あること(任意継続や国民健康保険の加入期間は除く)

②退職日の前日までに連続して3日以上出勤せず、退職日も出勤していないこと

③退職日に傷病手当金を受給していた傷病で引き続き労務不能であること。つまり、退職日を過ぎたあとで、まったく関連のない傷病を新たに申請しても、それついては傷病手当金は支給されません。退職後もがんでの手当金を受給したい場合、在職中にすでにがんを理由とした給付金を受け取っている必要があります。

Q.わかりました。ちなみに、雇用保険の失業給付の受給も検討しています。併給できますか?

A. 傷病手当金と失業給付金の併給はできません。そもそも失業給付は、次の仕事で働ける人のために給付されるものです。病気等で働ける見込みがない場合、受給することはできません。労務不能を支給要件とする傷病手当金と相反するためです。

さらに、失業給付は退職後1年以内に受給を開始しないと権利がなくなってしまいます。

Q. がんの治療は長引きそうです。病気が治ったら働きたいのですが、諦めるしかないでしょうか。

A.受給期間の延長をハローワークで申し込んでください。離職日の翌日から最長4年以内まで受給期間を延長することができます。

職業に就くことのできない日が30日をこえた日から1カ月以内の早期に申請することが原則ですが、延長後の受給期間の最後の日(退職日から3年後)までの間であれば申請が可能です。離職票が必要となりますので、退職時に会社からもらってください。ご自身での申請が難しい場合、委任状があれば代理人が申請することも可能です。

延長期間内に治療が終わり、仕事を探せる状態になったら再度、ハローワークに申請すると失業給付を受給できます。