※本記事は、日刊建設タイムズ紙にコラム「社労士 曽我 浩の目(107回目・2023.12月)」として掲載されています。

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労働条件通知書で就業の場所・業務の変更の範囲を明確に!ー勝手に就業場所を変更できるか

 ある会社で、書類作成のミスが多いスタッフを販売業務に移動させようとしました。ところが当人は「労働条件通知書には”総務事務”と書いてあるから異動するのは嫌です」と言ってきました。労働者が反対している業務を無理に変更できるか?ということは、以前よりトラブルの原因になっていました。

 そこで2024年4月から法律が改正され、労働条件変更の範囲を明示することになりました。たくさん業務があっていちいち書ききれない場合もあります。そのような時は、雇入れ直後の業務・就業場所を記載し、後は会社の定める就業場所と記載します。少なくとも変更が見込まれる場合、その旨も記載することになりました。できるだけ労働者の同意を得て変更するのが望ましいですが、どうしても同意が得られないこともあり、その時は争いになります。

 「そもそも、人事権は会社にあるから会社は自由に変更できる」という主張もあります。その際の判断基準は次のようになっています。「労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の限度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。」難しい言い方ですが、要するに「よく話し合って決めてください。最終的には裁判所が決めます」ということです。

 労働契約は重要です。ですが絶対に変更できないということは無く、双方が合意すれば変更できます”解雇したい”等の邪悪な動機がなければ、話し合いで決めることができるのです。日本では解雇が不自由な分、転勤・業務の変更が容易です。実際、裁判ではそれらの変更について、かなりの広範囲で認められています。

新入社員は大切に育てましょう

 当事務所でスタッフを募集しました。応募者のひとりは若い方で、前職での在職期間が短く、理由を聞いてみると「連日夜9時過ぎまで働き帰宅は0時近く、睡眠が取れなかった」という返事でした。また、空白期間が長いことについて聞いてみると、「メンタルを病んでいた」ということです。かなり無理して働いていたことが原因でした。若者が右も左も分からないまま、周りに言われるままに働き、メンタルを壊してしまうのはもったいないことです。新卒者は新しい世界に夢を持ち飛び込んできます。そうした新卒者について、初めの対応が重要です。たとえば、睡眠・運動・朝散歩を実践し、起床から1時間以内に朝日を浴びるといったことなども、健康に働くため大切です。採用には時間と費用が掛かります。せっかく来ていただいた方に最高のパフォーマンスを発揮してもらう環境にすることが、会社にとって繁栄の源です。

令和5年度年末調整変更点

【配偶者・扶養親族の退職所得】

配偶者または扶養親族に退職所得が見込まれる場合、退職所得を除いた所得の見積額などを記入しなければならなくなりました。それにより、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の記載欄に変更が生じています。

【国外居住親族の範囲が一部変更】

国外居住者(非居住者)である扶養親族の適用範囲が、令和5年1月から「16歳以上の人」のうち「30歳以上70歳未満の人」が除外されました。ただし、「30歳以上70歳未満の人」でも次のいずれかに該当する人は今までどおり非居住者扶養親族となります。

①留学により国内に住所及び居所を有しなくなった人(提出:親族関係書類のほか留学ビザ書類)

②障害者

③扶養控除の適用を受けようとする所得者から、その年において生活費又は教育費に充てるための支払いを38万円以上受けている人(提出:38万円送金書類)

年収の壁・支援強化パッケージ(2023年10月~)

「年収の壁」問題に対する支援強化のため、繁忙期に労働時間を延ばすなどにより、収入が一時的に上がった場合でも、事業主がその旨を証明することにより、引き続き不要に入り続けることが可能な場合等について、取り扱いが示されました。

【参照】厚生労働省 年収の壁・支援強化パッケージ

https://www.mhlw.go.jp/stf/taiou_001_00002.html

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トラブルを防ぐ労働契約書

社会保険労務士法人 曽我事務所
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