※本記事は、日刊建設タイムズ紙にコラム「社労士 曽我 浩の目(119回目・2024.12月)」として掲載されています。

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中小企業では能力不足理由の解雇はとにかく難しい!

 ある取引先の社長さんが言いました。「あそこに『ボー』としたのが居るだろう?高校新卒で採用した社員だが、どこの部署に行っても役に立たない。何とかしてくれと、幹部からも苦情が来た。あちこち異動させている間に20年近くが経ってしまった。この円安不況もあり、もう我慢できないので解雇したい」

 皆さんご存じの通り、解雇はなかなか難しいですから【退職勧奨】を提案しました。提案はすっかり無視され、社長はその社員を解雇。案の定、裁判となってしまいました。

 「相手がビビるような、有力弁護士を紹介してほしい」と要望されましたので、労使トラブルに強い弁護士を紹介しました。かなりの経営者側弁護士として著名な方でもあります。

そのような弁護士の力を借り、社長自身も法廷で、積年にわたる思いの丈を訴えましたが、結果は会社側の完敗でした。裁判の期間についての「賃金」を、解雇した元社員に支払うよう命じられたうえ、弁護士費用もかなりの高額となり、傷だけが残りました。

 中小企業で多いですが、ロクに評価システムも無く、教育もしていないとなると「能力不足」を理由とした解雇はまず無理です。能力不足で解雇したいのなら、①会社の求める“能力”を明確にする ②教育を実施 したうえで、それでも社員の能力が基準に達しないのであれば認められるかもしれません。

 日本はジョブ型雇用ではありません。裁判では、「解雇する前に、その人に適したポストへ配置転換できなかったのか」と必ず言われます。日本では、労働者の雇用維持が最優先なのです。

「社長は認知症だ!」などと暴言を吐かれても…裁判では解雇が認められない?!

 労使間で解雇が争われている裁判の傍聴に行ってきました。ある社員の言動が原因で、善良な社員が次々と退職しており、挙句の果てには社長に対し「認知症」などと暴言を吐く。

 強く注意すると、問題社員は「パワハラだ!」と主張し、その足でメンタルクリニックへ。精神疾患の診断をゲット、長期休職→裁判で訴える暴挙に出たとのことです。

 しかし、裁判官が「メンタルクリニックには、何回行きましたか?」と尋ねると、「1回だけ」との答え。これには裁判官も呆れかえっていましたが、これでも解雇は有効にならないというのです。結果、裁判官から示談を提案されました。

トラブル社員になりかねない人物は雇わないことです。社員を採用する際には、最低でも前職の退職理由を徹底的に聞いておきましょう。

【令和6年度】年末調整の大きな変更点

●定額減税の適用

 令和6年度年末調整の大きな変更点は、新設の定額減税制度に係る事務手続き(年調減税)が追加された点です。

 定額減税とは、令和6年度税制改正によって導入された、同年分所得税額の特別控除に関する制度です。所得金額の合計が1,805万円以下(もしくは給与収入のみ2,000万円以下)の方が対象で、定額(本人3万+配偶者・扶養親族1人につき3万)の控除が受けられます。

 この定額減税制度の導入に伴い、源泉徴収義務者である会社は、月々には源泉徴収税額から定額減税分を控除する「月次減税事務」を、そして年末調整時には「年調減税事務」を負担することになりました。年末調整時点の定額減税額に基づいて年間の所得税額を生産する必要があります。

●基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除申告書に定額減税に係る記載欄を追加

 定額減税および年調減税事務の新設に伴い、2024年(令和6年)分から従業員が会社に提出する書類「基礎控除申告書」の様式も変更されています。具体的には「令和6年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書 兼 所得金額調整控除申告書」と、年調減税のための申告書を兼ねる形への変更です。

 「本人定額減税対象」と「配偶者定額減税対象」のチェックボックスが新設されており、各種の定額減税を受ける場合にはこれらの欄でその旨を申告します。

●令和6年度年末調整の注意点

 国税庁が提供する様式「令和6年分給与所得に対する源泉徴収簿」の「年末調整」欄が定額減税の計算に対応していません。そのため、国税庁の様式を用いる場合、そもそも定額減税(年調減税)を忘れないよう注意し、年調減税額は源泉徴収票の余白等を用いて算出しましょう。

 なお、定額減税を含む年末調整額の計算には、国税庁が提供する「令和6年分年末調整計算表」が使えます。また源泉徴収簿の様式は任意であるため、定額減税を加味した民間の書類等があれば、そちらを用いても構いません。

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