※本記事は、日刊建設タイムズ紙にコラム「社労士 曽我 浩の目(118回目・2024.11月)」として掲載されています。

【日刊建設タイムズ社】https://www.k-times.com/

他人事でない過労死 建設業・運輸で激化 ―過労死の本当の原因はハラスメントとストレス―

 厚生労働省は、毎年11月を「過労死等防止啓発月間」とし、過労死をなくすため様々な取り組みを実施しています。

「過労死等防止対策推進法」に基づく啓発活動で、47都道府県で「過労死等防止対策推進シンポジウム」(参加無料)を行うほか、「過重労働解消キャンペーン」として、長時間労働の削減や、賃金不払残業の解消などに向けた、重点的な監督指導やセミナーを開催します。

「過労死シンポジウム」は47都道府県毎にテーマが異なりますが、すべて厚労省のホームページで見ることができます。注目点として、以前は長時間労働が注目されていましたが、近年はパワハラなどハラスメントに関するテーマが多いことです。長時間労働は客観的な証拠があり証明しやすいため、過労死認定されることが多いのです。

人間、やりがいがあれば長時間労働をしても簡単には死にません(※個人差があります。また、継続的な長時間労働は推奨されません)。過労死の原因は、実際には様々なストレスによるところが大きいです。とはいえ、ストレスは簡単には測定できません。

労働基準監督署の担当者といえど、「ストレスが原因で過労死」などと言えるわけがないのです。

―過労死する人は、例外なしに有給休暇を取っていない―

心身をリフレッシュするため、有給休暇は効果的です。建設業・運送業では、従業員が有給休暇を取れていない(取りづらい)現状があります。

しかし、会社は、年5日の有給休暇を必ず取得させる義務があります。労基署の臨検でも厳しくチェックされるところです。

休ませず、働きづめで、過労死した従業員の遺族から4億円の慰謝料を請求された中小企業もあります。一日単価で2万もしないような有給を渋ると、支払い能力を超える慰謝料となってドカンと跳ね返ってくる場合があるのです。

たった年5日です。これでも、グローバルスタンダードには程遠い、少ない日数です。工夫次第で、どのようにでもなります。有給で従業員にリフレッシュしてもらい、生産性をアップさせる。まさに経営者の腕の見せ所ではありませんか。

ハラスメントは会社にとっても大損害

厚生労働省では、ハラスメントのない職場づくりを推進するため、12月を「職場のハラスメント撲滅月間」と定めています。ハラスメントにはセクハラ、マタハラなど様々あります。

圧倒的に多いのはパワハラです。多くの社長さんは、「うちに限ってパワハラなど起こりえない」と思っています。ところが厄介なのは、パワハラをしている当人に限って、パワハラをしているという自覚がないことです。

あるアンケートによると、およそ30%の労働者がパワハラを受けた経験があり、そのほとんどの人が、パワハラのためモチベーションが下がったとしています。経営者にとっては、同じ給料を支払っても、労働者のパフォーマンスが下がれば大変な損害です。さらに、パワハラを受けた20%の人が退職すると言われています。ひとたび退職してしまえば、今まで何年も支払った給料もすべて水の泡となってしまいます。給料は経費ではなく、投資なのですから。



人材定着の一助に!退職金制度(中退共)

中小企業退職金共済制度(中退共)は、独力で退職金制度を設けることが困難な中小企業に対して設けられた国の退職金制度です。退職金制度があることで、従業員が安心して働けるようになり、社員定着と生産性の向上につながります。

国の制度であるため、確実に退職金が支払われ、税制上の優遇措置もあります。

一般の中小企業を対象とする制度のほか、特定業種退職金共済制度として、建設業、清酒業、林業を対象とした制度もあります。中退共制度についての詳細は、独立行政法人勤労者退職金機構のホームページなどをご覧ください。

【参照】中退共特設サイト(独立行政法人 勤労者退職金共済機構 中小企業退職金共済事業本部)

https://chutaikyo.taisyokukin.go.jp/special/index.html

―中退共6つのポイント―

①初めて中退共制度に加入する・掛金月額を増額する事業主に、国が掛金の一部を助成!

②掛金月額は、従業員ごとに16種類から選択でき、掛金月額は変更可能!

③掛金は口座振替。従業員ごとの納付状況や退職金試算額が事業主に通知されます。

④短時間労働者には、一般の従業員より低い特例掛金月額と、新規加入時の掛金助成にも上乗せあり!

⑤掛金は法人企業の場合は損金、個人企業の場合は必要経費として全額非課税!  

⑥従業員の転職時、すでに積み立てられていた退職金を引き継ぐことが可能な通算制度あり!

【業務改善助成金】事業場内の最低賃金引き上げによる助成金

 「業務改善助成金」は、事業場内で最も低い賃金を30円以上引き上げ、生産性向上に資する設備投資等を行った場合に、設備投資等にかかった費用の一部を助成する制度です。

※申請コースごとに助成対象事業場、引上げ額、助成率、助成の上限額の定めあり。

≪支給要件≫

・中小企業・小規模事業者であること

・事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内であること

・解雇、賃金引き下げなどの不交付事由がないこと

≪申請時に必要なもの≫

・申請書・設備投資等の見積書

・賃金引上げ計画書(※規模50人未満で、令和5年4月1日~12月31日の間に事業場内最低賃金を引上げていた場合は賃上げ結果)

・事業実施計画書

≪賃金引上げ時の注意点≫

地域別最低賃金の発行に対応して事業場内最低賃金を引上げる場合、発行日の前日までに引上げる必要があります。

【参照】令和6年度業務改善助成金のご案内(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001222481.pdf

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