【遺族年金】遺族年金を受けられる人と受けられない人

こんにちは!ダンディーすぎる社会保険労務士 曽我 浩です。

今回は「遺族年金を受けられる人と受けられない人」についてご紹介します。

一家の大黒柱を失い、これからの生活をどうすれば良いのか、途方に暮れてしまう。そんな時にまず思い出してほしいのは「年金を請求する」ということです。

年金をもらう条件

年金で一番大切なのは「年金が出るかどうか?」です。次の1~5のいずれかの要件を満たしている方が死亡したときに、遺族に遺族厚生年金が支給されます。

1.老齢厚生年金の受給資格を満たした方が死亡したとき

2.厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき

3.厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で初診日から5年以内に死亡したとき

4.1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けとっている方が死亡したとき

5.老齢厚生年金の受給権者であった方が死亡したとき

●年金保険料の納付が1ヵ月足りないばかりに受けられない人も

上記にあげた1および2の要件については、死亡日の前日において、保険料納付期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あることが必要です。ただし、死亡日が令和8年3月末日までのときは、死亡した方が65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいことになっています。

退職などで厚生年金を脱退した場合、4および5の要件については、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある方に限ります。

●遺族年金850万円の壁

遺族根厚生年金を受給するためには、遺族自身が死亡した方に生計を維持されていたことが条件となります。「生計を維持されている」とは、原則次の要件をいずれも満たす場合をいいます。

  1. 生計を同じくしていること。(同居していること。別居していても、仕送りをしている、健康保険の扶養家族である等の事項があれば認められます。)
  2. 収入要件を満たしていること。(前年の収入が850万円未満であること。または所得が655万5千円未満であること。)

例えば夫婦で会社経営していて、社長である旦那さんが亡くなってしまった場合。奥さんも専務で年収850万以上であると、遺族年金が出ない可能性があります。私の知っている方で、社長さんがガンであることが分かりました。そこで専務たる奥さんの年収を700万まで下げました。その後、不幸にして社長さんが亡くなりました。奥さんは850万円の収入要件を満たしていたので、無事に遺族年金をもらえることになりました。

内縁の事実婚でも、遺族年金が出る

内縁の妻(夫)も遺族年金を受けとることができます。

遺族年金は、「被保険者によって生計を維持していた遺族」が受けとることができます。

年金は遺族の生活の安定が損なわれないようにする制度ですので、法律(厚生年金保険法)は、婚姻届けを出していない「内縁の妻(あるいは夫)」でも遺族年金を受けとることができると定めています。

問題は、「戸籍上の妻がいながら内縁の妻がいる場合、戸籍上の妻に遺族年金が出るかどうか?」です。法律は、「戸籍上の婚姻関係が形骸化していて、事実離婚状態にあったときは、内縁の妻が年金を受けとることができる」としています。

婚姻関係が形骸化しているかどうかは、別居期間・反復した音信・訪問の有無・経済的な依存関係の有無・婚姻関係を修復する努力の有無などを見ることになります。

昔あった話では、ある社長さんが内縁の妻と暮らしていましたが、戸籍上の妻に月々5万円~10万円の、いわゆる慰謝料兼生活費をずっと送っていました。その内縁の妻にはもう30歳の娘さんまでいました。それでも社長さんの死後、戸籍上の妻に遺族年金が支給されました。そのような場合もあるのです。

●裁判と行政で基準が違うこともある

行政(日本年金機構)は、別居期間はおおむね10年以上とする基準を設け、それより短い期間では(夫婦関係は)破綻していないと判断することが多いようです。

しかし、裁判では別居期間が6年10か月でも“婚姻関係は破綻していた”として、内縁の妻の権利を認めたケースがあります(大阪地裁、平成27年10月2日判決)。

また、生活費が戸籍上の妻に支払われていたときは、行政は婚姻関係は形骸化していないと判断することが多いのですが、裁判所はお金の支払いがあっても婚姻関係の実体が失われているときは内縁の妻を配偶者と認めています(大阪高裁、平成26年11月27日判決等)。

このように、行政で認められなくても、裁判をすれば内縁の妻が配偶者として年金をもらえる可能性があります。

ただし、再婚すると遺族年金は受給できません。再婚後離婚しても、従前の遺族年金は復活しません。

●労災保険からも厚生年金からも遺族年金が支給されることがある

例えば仕事中に交通事故で死亡するということもありますよね。昔あった事例では、ある従業員が帰宅中に、センターライン超えしたダンプ車に衝突され、亡くなりました。遺族には自動車保険から何千万というお金が出ました。そのため、ある社労士は「もう自動車保険から3000万円出ましたから、厚生年金も労災も出ません」などと言ってしまいました。そんなことはありません。厚生年金、そして労災からもお金が出ます。※調整がかかる場合があります

ただし、損害保険から何千万も出ていますから、一定の支給停止期間があります(7年)。

ただし、これも年金事務所に請求をかけないと出ません。待っていても、年金は自動的に支給されるものではありません。それについて、頭の片隅に入れておいてください。遺族年金は、意外ともらい忘れが多いです。もし、ご家族が仕事で亡くなってしまったら、そしてそれが保険事故であった時でも、年金が請求できるんじゃないかということをぜひ覚えておいてください。

出典:日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/izokunenkin/jukyu-yoken/20150424.html

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