トラック運送業 2024年問題は運賃問題

こんにちは!ダンディーすぎる社会保険労務士 曽我浩です。

今日は、トラック運送業の2024年問題についてお話していきます。

●改革といっても年間残業960時間までOK

 運送業はこれまで残業時間は青天井でした。それが2024年4月1日から法改正により、制限されることになったのです。

でも、運転手の稼働時間が減れば物流が滞ってしまう。全国で約35%の荷物が届かなくなってしまう。こういった側面からの不安が大いに煽られています。この問題は、どうすれば解決できるのでしょうか?

 2024年問題とは、つまるところ「運賃問題」、お金の問題なのです。今度の2024年問題は「改革」とはいっても、年間残業を960時間までに制限する。これだけです。年間残業960時間とは、月平均で80時間ですから過労死ラインを優に超えています。こんな事で、世間は大変だ!と大騒ぎしているのです。

 トラック運転手は大変です。まず、労働時間は他産業と比較して2割長い。それなのに、賃金は1-2割低いのです。

残業時間は長い、給料は少ない。これでは人がどんどん離れるわけで、トラック運転手になろうという若者も出てこなくなってしまいます。

●人間が安い運賃で働くから、IT化も機械化も進まない

 問題の根本的な原因は「人間が我慢して安い運賃で働くから」です。これではIT化も機械化も進みません。高い賃金を提示すれば、企業も機械化に向けて動かざるを得なくなります。

 機械化が進めば会社の経済的な負担が減り、その分を労働者にまわせる。賃金が上がれば、労働者は無理して働き過ぎることなく生活を営める。過労死も減り、業界の厳しい状況が改善に向かうでしょう。

●弱肉強食…業界参入規制緩和のしわ寄せ 標準的運賃を強制力のあるものに!

 トラック業界は、弱肉強食です。運送会社は、あまりにも多すぎるのです。

 1990年代、業界参入の規制が緩和されました。それにより、4万社あった運送会社は6万社にまで激増。格安で請け負う業者が増えすぎてしまったために、荷主もそちらへ流れる。ギリギリのラインで競争が繰り広げられたため、価格破壊が起こってしまったのです。

  国土交通省は、標準的運賃を適用するようガイドラインを提示しています。ただし、これは言うほど強制力がない。強制力がないから、荷主も会社も何も変わらないのです。

たとえば、スペインやポルトガルでは運転手に荷役作業をさせることは禁止です。昔、スペインにツアー旅行した際、夜にフラメンコを鑑賞する予定がありました。しかし、現地のバス運転手は「もう帰らなければいけない」と言いました。これから予定があるのに何を言っているのかと思えば、「私は明日の朝あなたたちを迎えに来なければいけない。12時間の間を空ける必要がある。そのためには今、帰らないと法律違反になってしまう」とのことでした。それほど、法律で厳しくインターバル(休息期間)が取り決められているのです。さらに、イタリアでは日曜日にトラックが高速道路を走ってはいけません。

日本でも、トラック運転手の荷役やインターバル、さらには標準的運賃についても、国が最低賃金法ほどの強制力を持った形で推進しなければ、状況が変わることはないでしょう。

 

社会保険労務士法人 曽我事務所
社会保険労務士 曽我 浩
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