【残業代】中小企業の残業代対策 根本は下請け代金値上げ

こんにちは!ダンディーすぎる社会保険労務士 曽我 浩です。

今日は「中小企業の残業代対策についてお話します。

労基が臨検(立ち入り検査)のため、各事業所を回ってきています。監督官が何をチェックするのか。まず、残業代です。未払いもしくは支払いが十分でないと判断された場合、遡って払うよう、指導されることがあります。

残業代計算の基本

ある顧問先で、建設業の会社に労基の臨検が入りました。未払い残業代を遡って払うよう、指導されました。しかし、会社の状況から払うに払えないので、どうしたものかと社長さんは頭を抱えておられました。

根本的な問題となってしまいますが、この状況を解決するためにはやはり、下請代金の値上げしかありません。大企業が元請であることが多いですが、その元請がしっかりと下請けに対して適正な代金を支払うこと、これしかありません。

中小企業では、残業代の計算の仕方がよく分かってない方が多いです。残業代の計算の基本は、以下の通りです。

参入すべき賃金(基本給+諸手当)÷一か月平均所定労働時間

計算に算入するべき諸手当てが何かを把握することです。計算から除ける諸手当とは、通勤手当と家族手当だけです。他のほとんどの諸手当は、計算に入れなければなりません。

そして、1ヶ月の平均所定労働時間は、以下のように算出します。

年間総労働時間÷12=(365日-105-15)×8÷12=163

基本的に、一年間は365日です。365日のうち、105日の土日があります。それにプラスした祝日などの休日も大体15日くらいあるとします。それを12等分すると、大体163時間という数字が出ます。

ところが、会社によっては180時間という計算しているところがあります。これでは基本賃金がそもそも低すぎるということになってしまいますので、注意しましょう。

未払い残業代を指導されたら、強制力がありますので、払わなければなりません。私が立ち会った時は、「残業代を6ヶ月分遡って支払えば良し」という指導がありました。その時の監督官が言うには、残業代の請求には時効があり、法的に3年と定められています。しかし今回に限っては、労基は取り立て機関ではありませんから、将来に向かって是正すれば(これから改善すれば)良いということで、6ヶ月分の支払いで済みました。

社長さん尋ねました。「今回は6カ月でしたが、法的には3年ということで、従業員から3年分遡って払ってほしいと言われたらどうしますか?」

監督官も答えに窮していましたが、その方がこれまで担当したところに限っては、「今のところそういった事例はあまりありませんでした」ということで、なんとかその場は終わりました。

●元請と下請の不公平を是正するため、国が強制力を持って推進するべし

賃金引き上げに向け、公正取引委員会が実施する「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ」という取り組みがあります。

https://www.jftc.go.jp/partnership_package 【参照:公正取引委員会】

原材料・エネルギー・労務費の高騰が続く中、地域経済を担う中小企業が付加価値を高めるためには、コスト上昇分の適切な価格転嫁が必要不可欠。このような状況を踏まえ、発注側である親事業者と受注側である下請事業者の双方にアプローチすることで、取引の適正化、適切な価格転嫁を促していく取り組みです。適切な価格転嫁が実現することで、生み出した利益を企業が従業員にしっかりと分配して、未来への投資である賃上げを原動力にもなります。

しかし、これが出来ないからこそ頭を抱えている下請事業者が多いわけです。このようなことを元請にお願いすると、「お前のところはもういらないよ」と言われてしまう可能性があるわけです。

本来であればこういったことは国が強制力を持って主導し、実施させるべきです。

日本の賃金は諸外国に比べ、ほとんど上がっていないという状況があります。大企業との交渉を、中小企業に行わせても解決しません。

なぜこのような状況になってしまったか。大きな原因として、“闘わない”労働組合連合にあります。

労働組合連合は、今ではストライキもしません。

もう一つの原因は、大企業の内部留保にあります。現在、合わせて600兆円もあるといわれています。この600兆円の一部でも、適正な価格転嫁(賃金)に回すべきです。日本全国の労働者数は約6000万人です。

たとえば、30兆円を回すと、1人あたり50万円、収入が増えます。そして賃金が上がると、生活消費が増えます。

日本経済を活性化させるため、上記の問題を国が強制力を持って解決する施策を取るべきです。

社会保険労務士法人 曽我事務所
社会保険労務士 曽我 浩
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