※本記事は、日刊建設タイムズ 「社労士 曽我 浩の目」にもコラムとして掲載いただいております。

懲戒解雇しようとした社員が退職届を提出懲戒解雇できるか

ミスが多く注意しても機械を雑に扱いとうとう壊してしまった従業員を懲戒解雇したいという相談を受けました。

ところがその社員は退職届を提出してきました。この場合の対応です。

このまま辞めさせるのは腹の虫がおさまらないということで懲戒解雇したい場合の対応はどうすればよいか。

就業規則には退職する場合1か月以上前までに会社に申し出ることになっていても、もし退職を認めてくれなくても2週間経過すると労働契約を労働者は解約することができます。

法的には2週間経過していないので懲戒解雇できるかもしれません。

しかし私は懲戒解雇は就業規則に根拠があり手続きもきちんとしなければならないのできちんとした証拠がある場合でなければあまりお勧めしていません。

機械を壊した場合なら就業規則に基づきいくらかは損害賠償できるかもしれません。

このような場合例え退職金があっても話し合い、退職金の一部を放棄させることを提案しています。

退職金を放棄させるときは「退職合意書」を

そもそも退職金を放棄させることなど労働基準法上できるのかという意見もありますが「労働者が自由な意思に基づき退職金を放棄した場合はその放棄は有効」という最高裁の判例もあります。

この際は「退職合意書」を取ることです。「退職合意書」の書式は当事務所にあります。必要な方はメールでお送りします。

懲戒解雇の場合も解雇ですから即刻解雇の場合は解雇予告手当を支払わなければなりません。

しかし、労基署の解雇予告手当除外認定を得れば支払う義務はありません。

しかしこの除外認定がなかなか認められません。

数百万円の不明金を作った経理責任者についてこの「解雇予告手当除外認定」を申請したところ労基署の判断は不認定でした。

暴力事件を犯し同僚が救急車で運ばれるほどの傷害を負わせた労働者も不認定でした。

認定されたのは運送会社で飲酒運転の場合と建設会社で本人が横領の事実を労基署で認めた場合でした。

大切なことはこのような問題社員を会社から排除することです。

なるべく合意して退職させることです。この際後でトラブルにならないように書面で退職合意書を取ることです。

試用期間中の雇用終了は解雇と同じ 試用期間中は適格性があるかよく見る 

試用期間は「婚約」ではありません「結婚」です。法的にも「解約権留保付きの労働契約」と言われています。

通常の雇用の解雇のハードルが1メートルであれば試用期間中は70~80センチメートルです。

勤務態度に問題があれば書面で注意しておく、求める能力も「見える化」し足りない点は指摘します。文書で示すことは重要です。

期間満了での労働契約解消は解雇と同じです。

書面は当事務所では「勤務改善指導書」(この書式のフォーマット必要の方ご連絡ください。)の活用を提案しています。

ある営業会社で新人社員が先輩社員と一緒に得意先を回っている時突然倒れてしまったことがありました。

自動車で顧客を回る仕事で、試用期間であったこともあり契約を終了すると伝えました。

その新人社員は労働局の「あっせん」制度を利用し慰謝料請求をしてきました。

その社員にしてみればこんな会社にいたくないがこのままおとなしく辞めてしまうのも癪だということだったのでしょう。

私は総務部長と一緒に労働局あっせんを受けました。「あっせん委員」はベテランの弁護士で双方の言い分を聞いてあっせん案を提案してきました。

あっせん委員は、当人は継続雇用の希望はないので解雇予告手当プラス2か月分でどうかと提案してきました。総務部長は粘り、プラス1か月でお願いしたいとあっせん委員に要望しました。

あっせん委員が話してくれそれで合意しました。

試用期間満了で不採用にしても今はトラブルは少ないですが、それは労働者の労働法についての権利の無知によることが多いと思います。

裁判になればきちんとした理由が必要です。裁判になれば解雇と同じような理由が必要です。

むしろ本採用拒否が否定される可能性のほうが大きいのです。

それでも会社に合わないと思う場合は、よく話し合い退職合意書を取ることです。

ネットで本採用拒否の裁判を着手金なしで受けるとしている弁護士もいます。

会社にとっては大勢の中の一人かもしれませんがその労働者は人生をかけているのですから誠意を持って対応すべきです。

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